マッキンゼー・アンド・カンパニーのディレクター平野正雄氏が今年のキーワードとしてあげていた言葉、それが「アトマイゼーション」である。
平野氏によれば、これまで企業の中に囲い込まれていた人材や資産が解き放たれ、あたかも原子(アトム)のように独立してお互いに必要に応じて離合集散する現象が起きるだろう、と予測している。
グローバルな競争環境に巻き込まれた日本企業も、これ以上余剰人員を福祉事業的に抱えることが不可能となった。もはや終身雇用は過去のものとなりつある。一方、働く側もインターネットという強力なコミュニケーションツールを得て、拘束力の強い「企業組織」という形態を取らなくても、高度な協働作業が可能となり、特定の組織に所属する意義がますます弱くなっている。
特に、技術力やブランド、ビジネスモデルといった無形資産を持つ個人は、資本市場から無形資産をテコに資金調達できるため、一つの会社に長くとどまる必要がない。専門性の高い個人は、企業とは5年とか1年といった短いスパンで企業とアドホックな契約関係を築くようになると、平野氏は指摘している。
この典型的な、またよく知られた事例は、iモード立ち上げのため、2年契約でリクルートから移った松本真理氏だろう。彼女は、iモードプロジェクト立ち上げ終了と同時に、今度は「eWoman」の立ち上げに参画している。
ところで、このコンセプトは、、最近出版された「bウェブ革命」(原題:Digital Capital、ドン・タプスコット他著、インプレス)では、「分子化」という表現で呼ばれている。本書で紹介されている極端な説では、「これからは大企業に勤務する常勤の社員ではなく、独立した契約業者が仕事の大半をこなすようになる。ネットワークに組み込まれたこの種の『eランサー』は、流動的ないウェブに一時的に参加し、製品やサービスの設計、生産、販売、サポートを行う。」とのことだ。
今、極端と言ったが、現実にeビジネスの現場にいる感覚では、これはすでにそうなりつつある、と断言しても言いと思う。この現象は明らかにこれまでの組織論、あるいは人事評価システムに大きな見直しを強いることになるのは間違いない。
果たして日本企業はこの変化に適応できるのだろうか?
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