私の友人H君は、経済産業省のキャリア官僚としてがんばっていたが、この3月で役人を辞め、某大手コンサルティング会社で新しいキャリアの第一歩を踏み出したばかりである。
以前、彼から転職を考えているという話を聞いた時、私は、「辞めるのも決断だけど、辞めないのも決断だよ」と言ったことを思い出した。
私が言いたかったことは、「転職」を前提としてキャリアを考えるのではなく、まず自分が何をやりたいか、あるいはそれが明確でないとしても、おおよそどんな方向に進んで行きたいか、をじっくり考えた後で、どんな行動が自分にとって最善かを選択して欲しいということだ。結果として今の会社(組織)に残り現在の仕事を続ける、または別の部署に移るという判断が最善である場合もあるからだ。
大事なことは、キャリアの岐路・転換点に来たと思ったら、自分で進みたい方向をしっかり考えて決めるべきであり、現実に流されたままではだめだということである。
さて、元役人のH君は、なぜビジネス界に転進したのか?
それは自分のいろんな可能性を試してみたかったからだそうだ。彼はまだ20代であり、負うべきものもあまりない。果敢にキャリア上のリスクを取りに行ったわけだ。
こんな試行錯誤型のキャリア選択は、「ジグザクキャリア」とでも呼べるのだろう。漠然とした方向は感じでわかる。でもはっきりとゴールが見えているわけではない。そんな時は、ジグザグに進みながら、方向修正を行いつつ、ゴールを探していくという行動が望ましい。(⇒ゴールシーキングモデルだ!)
少なくとも、同じところをぐるぐる回っているだけの「グルグルキャリア」や、ただ漠然と方向感覚なく、様々な仕事を転々とする「テンテンキャリア」と違い、確実にどこかに到達できる。
コンサル業界が長い、口さがない共通の友人は、H君に対して「地獄の業界へようこそ」となんとも辛らつな歓迎の言葉を投げていたが、H君がどんな苦労をすることになろうと、後悔はしないで欲しいと願う。なにしろ、自分で決断したことだし、「試してみることに失敗はない」のだから。
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