これまで何度かお話させていただいた覚えがあるが、私は学生時代、「システム理論」に触れた。(「学んだ」とはとても言えない(笑))
ここで言う「システム理論」とは、通常「システム」という言葉で連想する「情報システム」に限定したものではなく、もっと広義の、「システム的な考え方」のことだ。
「システム的な考え方」の基本にはいくつかあるのだが、重要な点として、まずひとつは、お互いの関係で物事を捉えるという点がある。物事を構成要素に分解していくような発想ではなく、物事の間にある相関や因果関係を見ることに重点を置くということだ。
もうひとつは、「システム」とは、なんらかのインプット(投入物)を受け入れ、なんらかのアウトプット(成果物、変換物)を出すもの、という考え方である。
メーカーの工場を想像してみて欲しい。工場とは生産システムである。「原材料」というインプットを投入すると、「製品」というアウトプットを生み出す。
さて、最近、長年、システム的考え方で物事を見てきたにも関わらず、つい最近になってふと気付いたことがある。
それは、「インプット」がなければ、「アウトプット」は出ない、という単純な事実である。
例えばこんなことを思う。
今の自分は過去の経験や行動や考えたことの延長にある。過去のすべての経験を「インプット」、今の自分を「アウトプット」と考えれば、今の自分は過去の蓄積の結果としてのアウトプットである、ということだ。
これは、前向きに考えれば、どんな経験も自分の一部であり、かけがえのないものであるという思いを与えてくれるように思う。
(だから過去にどんなことがあったとしても、それを悔やんだり、否定する必要はないのだ。)
一方で、インプットが不十分であれば、アウトプットもお粗末なものになるという厳しい見方もできる。このことは、知恵やアイディアの創出力をより一層求められるようになってきた現代のビジネスパーソンにとって、肝に銘じておく必要がある点だとに思う。
「いいアイディアが浮かばない」と苦しんでいる人は、なによりもインプットが足りないのだ。空っぽの頭をいくら振っても、何も出るわけがない。(失礼、これは頭の良し悪しの問題ではなく、処理すべきインプット、つまり、アイディアの原材料が足りないという意味です)
優れた業績を収めた人の多くが、とにかくいろんな経験をしろ、たくさんの本を読め(読書は、著者の考えや体験をバーチャルに体験するものだ)と言うのは、「インプット」の重要性を理解しているからだろう。
村田先生(元慶応大学商学部教授)も、上記に関連したことをおっしゃっていた。
「知恵を出せば金が入る、金を出せば知恵が入る」
学生の頃からアルバイトばかりして金を稼いでいる暇があったら、学費を滞納してでもいろんな経験をしなさい、ということだった。
知恵を出してお金を稼ぐのは学生には早すぎるという判断らしい。
また、金の使い方については、
「モノを買わずに金使え」
とおっしゃっていた。
モノ(車とか)に金を使うのではなく、旅行や飲み会、読書など「経験・体験」に金を使うべきであるということだ。人は「経験」というインプットを通じて成長し、価値あるアウトプットを出すことができるようになる。
例えば、いくらブランド物で身を固めても、あなた自身のインプットには決してならないということだろう。
さて、あなたは、普段どんな「インプット」をしていますか?
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