Weekly Matsuoty 2002/06/30
なんとかしようとするとなんとかなっちゃう理論
 
 ずいぶん前にちょっとだけ取り上げたことがある覚えがあるが、1999年に発表されたキャリアカウンセリングの最新理論に、

「プランド・ハップンスタンス・セオリー」(Planned Happenstance Theory)

というものがある。直訳すると

「計画された偶然性理論」

となるが、その基本的な考え方は次のようなものだ。

 キャリア、あるいは人生は、自分ではどうしようもないこと、予期せざることで8割方が決まってしまう。逆に見ると、自分の意志で人生を変えることができるのはわずか2割しか過ぎないということだ。

 そのような中でキャリアを切り開いていくコツは、偶然性を自分の望む方向に必然化するような、そんな思考・行動スタイルを採用することである。これが「計画された偶然性理論」である。

 さて、上記のように書くと、まるで超能力を身に付けることのように思えるし、「計画された偶然性理論」とはいささか矛盾した表現でわかりにくいので、私は、

「なんとかしようとするとなんとかなっちゃう理論」

 と言うことにしている。(ちょっと長ったらしいが・・・)

 皆さんの中にもこんな経験をされた方がいるだろう。例えば、仕事が行き詰まっている時、こんな情報があれば、こんな人に会えれば、と必死になっていると、まるで関係のないところから、ひょんなきっかけで、一番欲しかった情報が手に入ったり、人に会えたりする。

 こんな経験を我々は、「偶然にも・・・」とか、「縁ですね・・・」という言葉で片付けてしまう。でも、よく考えると、全くの偶然性でもないことがわかる。

 何かを求めて必死に考えて行動していると、つまり‘なんとかしようとする’ということは、試行錯誤や無駄な行動を繰り返しているように思えるが、これはまるで、迷路の中で行き止まりを一つひとつ試していっているようなものだ。そして、行き止まりをすべて試し終わったら、残りは出口のみである。運がよければ(まさに運がよければ!)、3回のトライアルで出口にたどり着けるかもしれない。運がない人は100回やってもまだたどり着けないかも知れないが、いつかはたどり着けるはずである。

 これが一見、偶然性に見えることを必然化していくことであり、ポイントは、「求めていることを真摯に追い求め、あきらめずなんとかしようとする」という思考・行動スタイルである。決して「タナボタ」を期待することではない。

 もっとわかりやすい例を挙げよう。宝くじの当選確率を高めることはできない。当然だ。しかし、「宝くじを買う」という行動がなければ、当選確率は一切発生しないのである。
 これをキャリアや人生に当てはめて見ると、結局のところ、我々ができること・やるべきことは、成功の確率を高めようとすることではなく、成功の発生確率を高めること、つまりなんとかしようとして、できうる限りの打ち手を打ち続けることである。こうすることで偶然に思える現象を呼び込んでいくのである。

 要は、「なんとかしようとすればなんとかなっちゃう」ってことだね。

 ところで、話が飛ぶようだが、最近、トムハンクス主演の映画「フォレストガンプ」を見た。この映画のエンディングで、ガンプは、愛妻ジェニーの墓前でこんなふうにつぶやく。

「・・・・僕達は、運命にしたがって生きているのか、それとも風に流されて行き当たりばったりに生きているのか。多分両方が同時に起きているんだ・・・」

 フォレストガンプを見るのは2度目だが、今回、初めてこの言葉が心に響いた。
 
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