Weekly Matsuoty 2002/07/18
適 性
 
  「旅客機の客室乗務員、いわゆるスチュワーデスには、最も適性のない人間が就いている。」

 このことは、大手航空会社の役員も認める現実だそうだ。

 客室常務員の仕事は「接客業」である。顧客が飛行機に乗っている時間を快適に過ごしてもらうため、心からの奉仕精神に基づく、こまやかな配慮が求められる。そのためには、顧客の表情や微妙な動作から、顧客のニーズを敏感に察する力が必要である。

 ところが、実際に人気職業であるスチュワーデスになれる人間はそのような資質を一般には持っていない。

 おおよそ、裕福な家庭で何不自由なく育ったお嬢様であり、頭も良く、容姿にも優れ、学校では学級委員に選ばれるようなエリートである。厳しい入社試験・面接をパスするためには、場合によっては人を押しのけるくらいの強引さと自己主張力がなければならない。
 このような資質を有している人物が、果たして顧客の立場に立った、こまやかなサービスができるだろうか。仮にできているとしても、それは訓練によって身についた表面的な動作であり、真の奉仕精神の反映ではない。スチュワーデス自身も、自分の資質とは正反対の行動を求められる職務を遂行する中で、相当なストレスを感じているはずである。

 最近は、航空会社も競争激化で経費削減が課題となっており、客室乗務員を契約社員や派遣形態に変えるケースが出てきており、以前ほど魅力的な職業ではなくなっているので、上記に述べたような状況も多少は変わってきているのかも知れない。(裾野が広がっているという意味で)

 それにしても、ある職業に対する適性を有した人が、必ずしもその職業に就けるわけではないという現実には愕然とせざるを得ない。

「結局さ、航空会社の採用方法が間違っているってことだよね?」ということだけでは済まない問題だろう。搭乗客も満足するサービスを受けられないし、前述したように、スチュワーデス本人もストレスがたまる。つまり関係者みんなが幸せではないからだ。

 残念ながら、私が、このような問題に対して答えを持っているわけではない。しかも、上記のような事例は、決して航空会社に止まる問題ではないだろう。いろんな業界でおそらく同様の職務と適性のミスマッチが発生しているに違いないのだ。


*なお、スチュワーデスの方々の中にも、心からのサービスを提供している方がたくさんいらっしゃると思います。今回の例はやや誇張して書いていますので誤解なきよう申し添えます。
 
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