仕事の幅を広げたいるために別の部署に移りたい、あるいは思い切って別の業界で仕事をしてみたい、と考えた時、誰もがぶち当たるジレンマがある。
「経験がないからその仕事に就けない、その仕事に就かないと経験ができない」
というやつだ。専門性の高い業界や職種ほどこのジレンマは大きく、にっちもさっちも行かなくて思い悩むことになる。
これは、ニワトリが先か、タマゴが先かという古典的問題だ。じゃあ、どっちが先かと言うと、間違いなく、ニワトリが先である。これは断言できる。ただし、「ハリボテ」のニワトリで良い。
「ハリボテ」で良いというのは、経験がなくても、その仕事ができそうだ、と、相手(面接官など)に思わせることができればいい、という意味である。しょせん、人の能力はしばらく実際に働いてみないとわからないものだ。だから、過去の経験を問うことによって一種の担保を取っているのである。だが、もし経験が無くても、潜在能力あり、と相手を説得することは可能である。
では、上記の説得が成功するための唯一の方法は何か。それは、その業界、職種についての知識を読書等を通じて詰め込むことである。実務経験はないのだから、上っ面の知識であることは当然である。だから「ハリボテ」なのだが、十分な知識を蓄え、自分なりの考えを話せるレベルまで高めれば、相手に自分の能力の可能性を信じさせることができる確率は高い。これは私自身が、転職に当たって体験したことでもある。
以前、ダイレクトマーケティング在籍中に、数多くの中途採用者の面接に立ち会う機会があったが、入社動機として、「ダイレクトマーケティングに関心があります」と言いながら、入門書の一冊も読んでいない方がほとんどで、ずいぶんがっかりした。当時、経験を必ずしも必要とはしていない場合もあったが、知識もろくに持たず、軽率な「興味・関心」だけで求人に応募してうまくいくと考えるのは、甘いと思わざるを得なかった。逆に努力して勉強してきた方は、おおむね採用されることが多かったように記憶している。
ところで、最初は「ハリボテ」でうまく行っても、次は、ちゃんと中身を詰めるよう努力する必要がある。実は彼・彼女の能力は「ハリボテ」だったと気付かれる前に・・・。
つまり、自分の能力を証明するのである。新しい業界、新しい職種、ポジションで成果を出すということだ。この時点で、あなたは、キャリアのジレンマを克服したことになる。
Persuade first, then Prove yourself.
まず、説得せよ、そして証明せよ!
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