Weekly Matsuoty 2002/09/13
生データの料理方法
 
 今、知人が主催する国際標準のプロジェクト管理手法「PMBOK」(Project Management Body Of Knowledge)の勉強会に参加している。
 「PMBOK」は、文字通り一般化された管理手法である。プロジェクトの計画技法、運営・スケジューリング技法、チーム内コミュニケーションなど、プロジェクトの立ち上げから終了までに必要とされる知識・ノウハウを体系化してある。
 プロジェクトベースで仕事を行うことの多い私にとって、「PMBOK」を学ぶことはとても有意義なのだが、一点、PMBOKではカバーできない、一般化が難しいことがあると思う。
 それは、プロジェクトチーム編成に当たって、当該プロジェクト成功のために必要なノウハウを持つ人間を、どうやって見つけるか、またチームに参加してもらえるか、という点である。
 「PMBOK」とは、あくまでプロジェクト遂行プロセスを効果的・効率的に進めるためのものであり、その成果の質は、チームメンバーの能力以上には高めることはできない。つまり、チームメンバーが編成された時点で、成果の上限はある程度確定してしまうのである。したがって、どれだけ各分野の優秀な人間を集められるかが、実は最も重要だ。
 こんなことを考えていたら、たまたま「インデックス・スペシャリスト」という職種(?)が数年前に提唱されていたことを知っ た。「インデックス」という言葉通り、このスペシャリストは、誰がその分野のエキスパートかを示すことができる、ということである。当人がある分野の課題の答えを知っている必要はなく、その答えを持っている人間を知っていることが強みである。つまり、‘KNOW WHAT’ではなく、‘KNOW WHO’のスペシャリストということだ。
 「インデックス・スペシャリスト」という、日本語ではピンとこない表現はさておき、単なるプロジェクトマネージャー(=進捗管理役)ではなく、プロデューサー(=価値創造役)を目指すのであれば、まず、インデックス・スペシャリストとしての能力を磨く必要がある。そのためには、多方面にわたる知識獲得と、不断の情報収集、幅広い人脈形成、そして相手の能力を見極める力を伸ばしていくことが求められる。これは非常にタフな作業であり、確かにPMBOKで標準化できるようなものではない。
 さて、インデックス・スペシャリスト的な人は実際にはどんな人か考えてみると、例えば、iモードの開発に関わった松永真理氏がまず思い浮かぶ。最新の著作「iモード以前」また前回の「iモード事件」を読むとわかるのだが、どんなプロジェクトにおいても、松永氏を中心とする優秀なチームがうまく形成されている。おそらく松永氏の場合、インデックス・スペシャリストとしての能力を伸ばしたというより、天性のものであるようだが。
 ともあれ、これだけ専門分化が進み、また一人ではとてもカバーできない、複雑な仕事が多い現代において、インデックス・スペシャリスト的な能力は、誰もが備えるべきものだろう。
 
close