Weekly Matsuoty 2003/05/27
BATNA
 
「ビジネスとは等価価値交換である」

こんな、当たり前のことを再認識したのは 最近のことだ。仕事を発注する側と、仕事 を受託する側、確かに双方の立場は異なる が、基本的には、相応の成果と、その成果 に等しい対価を交換するのがビジネス(取 引)である。

受託する側から見れば、発注元は「顧客」 であるから、当然ながら感謝の気持ちは忘 れてはいけない。しかし仕事そのものにつ いて卑屈になる必要はない。顧客のニーズ に確実に応えている限りは、相手も対価相 応の便益を得ているからだ。逆に、必要以 上卑屈になるのは、対価にふさわしい仕事 をやる自信や能力がないことを示している ことになりかねない。

ただ、当然ながら、現実はそう理想どおり にはいかない。きちんと筋を通してくれる 顧客の方が多いが、業者扱いをして足下を 見るだけの人もたまにいる。また、交渉の テクニックが1枚も2枚も上手で、気付いた らとんでもなく不利な条件で、仕事をやる 羽目になっていた、という可能性だってあ る。

こんな状況に陥らないための交渉術のひと つが、「BATNA」(Best Alternative to Negotiated Agreement)をあらかじめ準備 しておくことだ。「BATNA」とは、取引交渉 が決裂した場合に、その場の収拾を図るた めの最善の対応策である。

交渉の専門家によれば、交渉の目的とは、 双方の「目標の達成」にあり、「合意」す ることではないという。したがって、当方 の目標が、どうしても達成できない状況に なった場合には、交渉を断念することもや むを得ないと考え、対応策をあらかじめ考 えておく。そうすれば、相手にまるめこま れたり、受託側だからといって変に卑屈に なることなく、双方が納得できる合意に 到達できる可能性が高くなる。

だから、やたら値切るだけの顧客がいた ら、机を‘バン’と叩いて「BATNA」と叫 び席を立つ、というのもありだろう。 まあ、そんなにスパッと交渉を終わらせ るのは、そうそう簡単にできるものでは ないけれど・・・

なお、蛇足だが、等価価値交換といって も、一つ一つの仕事単位での等価交換に こだわりすぎるのは良くない。まず対価 以上の成果を上げて、その差額分は後か らゆっくり回収という取引も、自社の余 力に応じて受けることもありだ。これが、 (先行)「投資」というものだから。
 
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