Weekly Matsuoty 2000/05/17
オペレーションモデル
 
 「ビジネスモデル」

 この言葉は間違いなく今年の流行語大賞のひとつに選ばれるだろう。特にネット起業家の会話に頻繁に登場する言葉であるが、その本質を理解した上で語っているのか、どうかについては疑問である。

 さて、ビジネスモデルは3つの下位モデルで構成される。

1 ストラテジーモデル
2 レベニューモデル
3 オペレーションモデル

 「ストラテジーモデル」は、事業の基本的な方向性を規定するものであり、ビジョン、ターゲット、バリュープロポジションなどを明確にしたものである。要は、どのような理念(ビジョン)を基盤として、どんな人(ターゲット)にどんな価値(便益)を提供するのか、ということを決める。つまり、事業の大枠を設定したものである。

 ストラテジーモデルが決まったら、次にどうやって儲けるか、を決めるのが「レベニューモデル」である。事業を運営する以上、お金が必要である。営利事業であれ、非営利事業であれ、最低限運営コストをカバーするだけの収益をなんらかの方法で上げなければ、事業を継続することができない。だから、売上を上げるための仕組みをきちんと考えなければならない。

 ただ、レベニューモデルとストラテジーモデルは、現実には密接に結びついており、きれいなストラテジーモデルが描けても、そのモデルではどう転んでも事業を継続するだけの収益が上げられない場合がある。つまりレベニューモデルが成立しないことがあるということだ。その場合は、ストラテジーモデル自体を組みなおすことになる。

 ところで、ストラテジーモデル、レベニューモデルともそのままでは、しょせん絵空事、机上の空論である。事業として具体化するためには「オペレーションモデル」を設計しなければならない。

 オペレーションモデルとは、文字通り日々の業務を回していくプロセス、方法、資源配分を定めたものであり、具体的には、販売業務、受注業務、配送業務、請求業務、データ管理業務等の基本的な流れを明確化していく。業務を遂行する現場ではさらに「申込書」「契約書」「請求書」「領収書」等の書類の書式、内容に落としたり、「顧客対応マニュアル」といったものに具現化していく。

 どんなにすばらしいストラテジーモデル、レベニューモデルを組み立てたとしても、きちんと商品・サービスが提供され、代金が回収されなければ、事業が成り立たない。そのためには極めて地道で詳細な決め事の連続である、「オペレーションモデル」が完璧に組み立てられなければならない。「オペレーションモデル」の実現に失敗した企業は間違いなく倒産の憂き目にあう。

 夢を語る、という意味で、ストラテジーモデル、レベニューモデルを自慢気に話すのも結構だが、オペレーションモデルをきっちりと組み上げる現実性を持つことが事業の成功を導くのである。

 ネット専門の投資会社社長、S.ハーモン氏は、真に価値のあるネットベンチャーとはどんな企業か、という質問に対して、こう答えている。

「最も重要と言えるポイントはエグゼキューション、遂行能力だ」

 また、「Roadmap for Success」(邦題:e-ビジネス、企業変革のロードマップ、ピアソン・エジュケーション」の中で著者はこう言う。

 「実行」こそがe-ビジネスモデルのデザインにおける最重要課題である。

 
close