Weekly Matsuoty 2000/08/01
WITH OR WITHOUT 'e'
 
 e-woman, e-shop, e-lady,e-sekai, e-school....

 ‘e-なんとか’、というWEBサイト名、または会社名は、ネットビジネスを連想させるブランドとしてすっかり定着したようだ。数年前までは、Internetを意味する‘i‐なんとか’というブランドも多かったが最近はあまり目にしない。

 さて、既存企業がネットビジネスに乗り出すに当たって、インターネット上の新規店舗的な意味合いで、‘e-なんとか’と命名するのならともかく、オンラインだけで勝負するネットベンチャーで‘e-なんとか’とするのは問題が多いと私は思う。

 名は体を表す、と言うが、「オンライン上では、別の次元での戦いに持ち込めるから俺たちは有利だ」、という勘違い(間違った前提)に陥りがちになると思うからである。(もちろん、どんな企業名であれ、そんな間違った前提に固執しているネットベンチャーは存在するが・・・)

 また、顧客にとっても、「インターネットだから利用する」ということは決してない。あるサイト、サービスを利用するかどうかは、「安いから」「便利だから」「楽だから」「役に立つから」「好きだから」といった、実利や感情に深く根ざしたものであり、インターネットであるかどうかは実はまったく関係ないのだ。

 結局、‘e-なんとか’という名前をつけるのは、消費者心理をあまり考えない、プロダクトアウト的な発想だ。「インターネットだからすごいんですよ・・・」という押し売りイメージを与えるだけである。

 しかも、危険だと思うのは、‘e-なんとか’という企業が一社でもスキャンダルを起こしたりすると、‘e-なんとか’企業群は十把ひとからげに、「だからネットベンチャーはあんまり信頼できないんだよね」といったネガティブなイメージを勝手に押し付けられてしまう可能性が高いことだ。

 もはや、既存企業の弱点を突いて、オンラインの強みを生かせた時代は終わった。既存企業も、別会社にしたり、経営戦略の大転換を行ったりして、「e-Commerce」への対応を積極的に進めている。オンラインだけで勝負する競合ネットベンチャーも続々と現れてくる。

 ‘e’という言葉があろうとなかろうと、ビジネスの基本に忠実に、やるべき当たり前のことを着実にやれる企業のみが生き残る。オンラインであろうが、オフラインであろうが、顧客にとってベストの価値を提供できる企業のみが生き残る。

 ヴァーチャルとリアルを区別する必要はない。対象顧客にとって、ベストのサービス、ベストのブランドを考えよう。インターネットは、顧客と企業をつなぐ単なる媒体、あるいは接点にしか過ぎないのだ。
 
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