WEBサイトを顧客対応に活用する最大のメリットは、コストの低減が可能ということだ。
自社製品に関する詳細な仕様を掲載すれば、パンフレットを請求する顧客は減少し、パンフレットの印刷コストや送付コストが減らせる。
また、あらかじめ予想される質問については、FAQ(Frequently Asked Questions)のコーナーで回答を用意しておけば、コールセンターへの問い合わせが減少し、オペレーター数を減らすことができる。
企業別、あるいは個人別のページ(いわゆるパーソナライズドページ)を設定できるようにして過去注文履歴が参照できたり、繰り返し発注する消耗品のようなものは、専用の発注画面からワンクリックで発注できるようにすれば、同じく企業側に直接問い合わせが来ることが減少し、対応コストが削減できる。
上記のような仕組みは、顧客側が自ら行動を起こし、情報を探索させることを促進する仕掛けであり、「セルフサービシング」(セルフサービス化)と呼ぶ。
しかし、企業側に取っては好都合なこれらの仕組みも自分が顧客の立場に立ってみた場合、果たしてありがたいものなのか、よく考えるべきだろう。「自分で情報を集めるのが好き」、という人もいるだろうが、逆に「めんどくさい」と思う人も多い。 また、さんざんサイト内を探し回ったあげく、欲しい情報が見つからなかった時の落胆は大きい。
しょせん、相手はコンピュータであり、こちらが合わせなければならないのは理解できる。しかしコンピュータでらちがあかなければ、誰か生身の人間が対応して欲しいものだ。
企業としては、こんなニーズへの対応を忘れるべきではない。いたずらにコスト削減効果ばかりを追うのではなく、顧客満足度の向上のためにサイトを最適化する、という発想が必要なのだ。
そのためには、コンピュータシステムに過ぎないWEBサイトでの顧客対応と、生身の人間のそれを融合していかなければならない。具体的には、チャットや、ICQのようなインスタント・メッセージング、あるいはインターネット電話で顧客がオペレータと直接会話できる機能をWEBに付加することにより実現する。
このような仕組みを導入することを「ヒューマニゼーション」(認知された訳語はまだない)と呼ぶ。
米国では浸透しつつあるこのヒューマニゼーションも、日本ではまったくといってよいほど導入されていない。この理由には、パソコンに音声ボードが付いていない企業が多い、常時接続ではない、対応できるオペレーターが少ない、といったことがあると思うが、最も大きいのは企業側の意識の遅れだと私は考える。
ところで、昨今、よく耳にするようになった言葉に「eCRM」がある。この言葉づらだけだと、単純にインターネットを活用したCRMの実現と解釈してしまいがちだが、正確な意味は異なる。実は、「eCRM」とは、オフライン、オンラインを含めたすべての顧客対応ツールやシステムをCRMの理念のもとに融合・統合したものを意味するのだ。
ヒューマニゼーションは、従来のCRM(オフライン主体の)をeCRMへと進化させるための一つの形態である。
日本企業も、eCRMの本質を理解し、ヒューマニゼーションを導入していくことにより、eCRMへと駒を進める時期だろう。
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