マーチャンダイジングは、主に小売業においてつかわれる言葉で、適切な商品を適切な見せ方で適切なタイミングで顧客に提供することを言う。
要は、顧客の目の前に提示した商品を買う気にさせるテクニックである。百貨店・量販店から、ブランドショップ、八百屋まで、実際の店舗を構えて顧客を待ち受ける小売業において、マーチャンダイジングは最も重視なテクニックだ。
ネット・マーチャンダイジングは私の造語だが、インターネット上の小売業、すなわち「オンラインショップ」においても、マーチャンダイジングの巧拙が成功の鍵を握っている。
しかし、現実はひどい。三石玲子氏が、日経ネットビジネスの辛口EC採点簿でさんざん酷評しているが、大手小売業ほどマーチャンダイジングの発想が弱い。おそらく、現場で腕を磨いたマーチャンダイジングのプロはオンラインショップ部門には配置されておらず、リアル店舗の方にはりつけられたままなのであろう。
さて、マーチャンダイジング技術の中で、特にオンラインショップの低レベルさを露呈しているのは、「適切な商品構成」、言い換えると品揃えである。
同一のカテゴリーに、例えば価格帯が2千円のものと、1万円のものが並んでいる、形状やサイズ、カラーのバリエーションが少ないため、なかなかぴったりのものが見つからない。必死に探しているうちに購買意欲が失せてしまう・・・。
そもそも、小売店舗の存在意義の一つは、さまざまな商品を取り揃えることによって、比較購買を可能にすることにある。顧客から見れば、「選ぶ楽しみ」が小売業の価値である。自分にとってどれが最もいい商品かを決めるためには、どうしても比較対象として、同一のカテゴリー内で、同一の価格帯(=品質がほぼ等しいとみなせるから)の類似商品が豊富である必要がある。複数の選択肢から選ぶことによって、「納得感」を得たいのだ。
売れないオンラインショップは、まず「ネット・マーチャンダイジング」が自分のところではきちんと高いレベルで実現できているか、検証すべきだろう。
「ネットのBtoCはそもそもうまくいかないのさ」などと、したり顔で逃げを打つのは甘い。
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