前回に続いて、「信頼」に関わる話。
「コミットメント関係」とは、特定の相手との付き合いや取引をある程度の期間にわたって継続している関係にあることを意味しているが、大きくは2種類に分けることができる。
ひとつは、恋人同士や夫婦関係のようにお互いに愛し合っている、(少なくとも以前は(^_^))ような感情的きずなで結ばれているもの。もうひとつは、搾取されるかもしれない可能性のある外部社会に対抗して、内輪の結束を維持しているものである。
後者は、やくざ的なコミットメント関係と呼ぶことができる。彼らの間には必ずしも感情的な結びつきや信頼関係があるとは限らない。ボスの制裁が待っているから、仲間を裏切らないだけである。これは前回述べた、田舎の集落における村八分という制裁が抑止力となって、お互いに悪いことをしない関係が維持されていることと同じだ。やくざ的なコミットメント関係によって、「安心」を獲得しているのである。
お互いに信頼関係が結ぶことが難しい、あるいはそのように思える環境、つまり不確実性の高いところでのビジネスは、基本的に特定の相手との取引を継続することによって、不確実性に対抗する。
日本ではこのやくざ的コミットメント関係を結ぶ傾向が強い。それは、いわゆる「ケイレツ」に代表される企業間の強い結びつきである。
そして、このやくざ的コミットメント関係が、需要者と供給者間の自由な取引を実現するeマーケットプレイスの成功の最大の障害となっている。同一の製品ならもっと安く、早く調達できる新しい取引先よりも、既存の取引先との関係維持を優先させる企業が多いため、自由な取引が成立しにくい状況が続いているのである。
実はこの問題にはさらに深い要因が隠れているように思える。それは、新しい取引先が信頼できる相手かどうかを見極める力が日本企業は弱いのではないか、ということだ。
米国人が新しい企業に対してもオープンなのは彼らがリスク志向、チャレンジ志向が高いからだけでなく、当該分野のスペシャリストとしての能力を磨いており、取引先の力量を見極める力が高いからである。一方、日本企業は、現場担当者が専門性に欠ける場合が多く、結局これまで付き合いがあり、「安心」していられる既存取引先を惰性的に選択する。
もちろん、自由な取引といっても、場当たり的に毎回取引先を変更するのは得策ではない。しかし、常に業界全体の動向を追い、よりコストを削減できる、あるいは優れた製品・サービスを提供できる企業との取引の可能性を探ることは、惰性的な取引から生まれる機会コストの増大を防ぐために必要である。
日本企業の目利き能力の低さがやくざ的コミットメントを継続させ、eマーケットプレイス発展の障害となっている、というのは、私個人の仮説に過ぎないが、皆さんはどうお考えになるだろうか。
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