Weekly Matsuoty 2001/05/29
よろこばしきビックリ
 
 考えてみれば、多くのネットビジネスが「借りモノの思想」だった。初期のネットビジネスを主導した検索エンジンが、まさに他人のコンテンツを紹介するだけで収益を上げるビジネスモデルだったから無理もないかもしれない。

 多くのネットビジネスが提携戦略という響きのいい言葉を掲げてコンテンツを融通しあった。自ら汗水たらしてコンテンツを創造することを放棄し金の力でコンテンツを外部から流し込んだ。なんら手を加えることもなく。

 こんなことをやっていて、WEBが面白いはずはない。ブロードバンド時代を目前に控えて、コンテンツ不足が声高に語られているが、不足しているのはコンテンツではなく、創造しようとする意欲や根気である。

 このことを感じさせてくれるのが、コピーライター糸井重里氏が運営する「ほぼ日」(ほぼ日刊イトイ新聞)だった。

 彼は、最近、このサイトを生み出すまでの話を本として出版したが、自らコンテンツ創造の苦労をしているだけに本質をついた厳しいコメントをしている。

“みんなサイトを立ち上げるときに「コンテンツが大切だ」と言いながら、実際にコンテンツをつくってこなかったのだ。”

“コンテンツとはソフトだ。つまりクリエイティブということだし、よろこばしきビックリのことだ”

“ビジネスモデルをどんなに検討しつくしても、人はその「ビジネスモデルってやつ」をよろこぶわけではない”

 情報が氾濫するネット時代、ブロードバンドの到来はさらに情報量の増大が加速する。そんな中で本当に価値を持ち、多くの人をひきつけるのは、オリジナリティ、クリエイティビティのあるコンテンツのみである。

 逆説的に思えるかもしれないが、オリジナリティ、クリエイティビティのあるコンテンツを生み出す人々は、はたから見れば苦労しているように見えるが、本人はやりたいから、楽しいからやっているだけである。自分がやりたい、楽しいと思えることに打ち込めばいいコンテンツができる。「よろこばしきビックリ」が生まれるのである。

 私自身も今、それに取り組んでいるところ。結果は見てのお楽しみ。(^_^)

*糸井さんの本、なかなか面白いですよ!
 「ほぼ日刊イトイ新聞の本」(講談社)
 
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