先日、仕事でLINUXの開発者、リーナス・トーバルズ氏にインタビューする機会があった。
彼はまだ31歳、最近、近視をレーザー治療で治し、小さい時からかけてきて、トレードマーク的なものになっていたメガネを外していたこともあって、‘若いなぁ’というのが第一印象だった。
彼は、世界中の数百万人のLINUX開発者にとって、神格化された存在であり、その頂点に立つ、いわばLINUX王国の王だと、以前私は喩えたことがある。
しかし、LINUX開発は、ただ楽しかったからやっただけ、LINUXや自分が現在の状況に至ったのは偶然だと強調するリーナス氏の力みのない物言い、周囲の人間を包み込むような温かさ、あるいはシャイな雰囲気を間近で感じると、彼はLINUXコミュニティ頂点のにいるのではなく、その輪の中心点にいるのだと思い直した。
LINUXコミュニティは有志の集まりであり、厳密な階層構造と権限によって統制された組織ではない。LINUXの開発を進めていく上で混乱を防ぎ、意思決定を円滑にするためのレポーティングラインは存在するが、誰が上で誰が下、つまり従属したりされたりするという関係ではない。
むしろ、LINUXコミュニティの参加者は、リーナス氏を中心として平面に拡がり、二重三重に彼を囲んでいるイメージである。もちろん、技術者たちは誰もがリーナス氏自身を直接知っているわけでなく多くは、LINUXというプログラムに対する興味によって集まって来ているのだろう。
しかし、リーナス氏はLINUXを顔の見える存在にした。実体は単なるプログラムに過ぎないLINUXにある種の人格を持たせることに‘偶然’成功したのである。この人格は、当然ながらリーナス氏自身のパーソナリティの反映であり、やはり偶然ではなく、彼だからこそLINUXがオープンソースとしてここまで巨大な存在になったように思える。
そういえば、SURVEY MLを主宰するネットレイティングス社長の萩原氏にも、リーナス氏と共通する、気取らない、周囲をなごませるような人間性を感じる。4000人の登録者を数えるSURVEY MLが管理者のスクリーニングが行われないにも関わらず、たいした問題も発生せず運営されてきているのは、コミュニティの中心点にいる萩原氏のパーソナリティの反映だろう。(なお、逆に、問題が発生したコミュニティは主宰者が悪かった、というつもりはない。)
また、期せずして、「2ちゃんねる」の運営者である、‘ひろゆき’氏にも先週会う機会があったが、やはり「2ちゃんねる」がここまでの存在になるまでには、立ち上げ期に、彼自身が運営に力を入れたからであることには間違いない。
さて、上記3者に共通しているのは、やりたかったからやっただけであり、意識的に大きくしようとか、もうけようという意思は持っていなかった点である。(3者のうち、現在富豪になれたのは、リーナス氏だけである。(^_^) )
なんとなく、コミュニティ成功の秘訣が少し見えてきたような気がする。
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