「インターネットバブル」の本で紹介されている投資銀行家の言葉は、実に的を得ている。
“インターネット株を買っている連中は、投資をしているのではなく、賭けをしている。彼らがやっているのは、バリュエーション(事業価値の評価)ではなく、オッズ(賭けの倍率)を設定しているのだ”
確かに、多くの投資家がインターネット業界に多額の金を賭けた。同時にそれは、多くの若者がインターネットビジネスに人生を賭けたことも意味する。
失われた金は戻ってこない。でも人生はやり直せる。だから、バブルにでもならなければ、到底手に入れることができなかったであろう多額の資本金を元に、リスクの高いビジネスに勇気を持って踏み出すことができた。
当然の結末だが、インターネットビジネスという成功法則がまるで見えない未知の世界では、ほとんどの者が失敗を甘受せざるをえなかった。
私自身その一人であるが、無責任な言い方と非難されるのを承知で言えば、まさにリアルな起業体験をさせてもらったと感謝している。シミュレーションではなく、現実の顧客、パートナー、同僚という状況において必死で成功の道筋を見つけようともがけたのは貴重な体験だった。まさに、失敗から学ぶものは大きかったと思う。
米国にしろ、日本にしろ、これからの企業は、インターネット技術を核とする「ネットワーク化社会」に適応しなければ生き残れない。そのためには、どのようにしたら適応できるかを試行錯誤の中から見つけるしかない。
その役割を果たしたのが、無謀な若き起業家たちであり、彼らを資金面で支えたのがバブルの勢いで金をつぎ込んでしまった投資家たちである。
こうして考えると、インターネットバブルは神が仕組んだ必然だったと言えないだろうか?
繰り返すが、インターネットバブルで失われたお金は戻ってこない。しかし、インターネット革命に適応するために必要な、多くの知見が残った。これはすべての企業人にとって価値ある遺産である。
かって、ネットベンチャーを総称して「インターネット株式会社」と呼んだことがあったが、この会社は、産業界全体における「研究開発部門」の役割を果たしていたのだ。
先代が遺してくれた知見を元手に、より賢くなったネットベンチャー第二世代が台頭してきている。
|