企業内では毎日様々な活動が行われている。目的別に言うと、売上を獲得するための販売活動、書類を処理するための事務活動、顧客からの問い合わせに対応するための顧客サービス活動、業務能力を高めるための社内研修活動 等々。
企業が存続するためには、収益を上げ続けることが結局のところ最も重要なのだが、企業活動の多くは必ずしも売上と直結していない。
ところが、こういった企業活動を管理(コントロール)する方法としては、損益計算書や貸借対照表、資金繰表といった、金銭的な指標しか利用していない企業がほとんどである。現場レベルでは、確かに顧客満足度や業務生産性といった指標を用いてはいるが、経営レベルで統合されていないのが現実となっている。
現在、一般的な経営管理手法として利用されている上記のような金銭的指標は、年度、つまり1年間を基本尺度としているためにどうしても短期的な思考に陥りやすい点は以前も指摘した。
極論すれば、会社収益に直結する活動は販売活動だけであり、それ以外は販売活動を支えるものであると言えるが、その効果は明確に数字に表しにくいし、長期的にじわじわと効いてくるものである。例えば、良質な顧客サービスは継続購入促進効果を持ち、結果として販売コストを低下させるし、社内研修を通じた能力開発は、企業全体の業務効率を高め、利益率を改善させる。
とすると、企業活動を短期的な視点、長期的な視点、あるいは戦略的視点、戦術的視点などさまざまな切り口から統合的に評価する必要がある。「バランス・スコアカード」は、そのような統合的な評価体系のひとつであり、次の4つの切り口を持つ。
1 財務的視点
2 顧客の視点
3 社内ビジネス・プロセスの視点
4 学習と成長の視点
*これらの前提として、明確に定義されたビジョンと戦略が設定されている必要がある。
バランス・スコアカードの詳細については専門書にまかせるとして、その本質は何か、気になるところだろう。そこで、事例としてHalifax社のZ理論*を紹介する。
1 もし我々が的確なスタッフを得、彼らが十分訓練され、動機づけられるならば(学習と成長の視点)
2 我々は、適切なことを能率的に行い(社内ビジネスプロセスの視点)
3 その結果、顧客が喜び、顧客ロイヤルティが向上し(顧客の視点)
4 我々は、ビジネスを維持し、あるいはさらに獲得するであろう(財務的視点)
このようなわかりやすい理論によって、一般社員にまでバランス・スコアカードの意義を理解させることにHalifax社は成功しているのである。
*出典:戦略的バランス・スコアカード、生産性出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4820116746/
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