Weekly Matsuoty 2000/07/19
テクノロジー・インテグレーション
 
 多様化し、高度化する顧客ニーズ、同業他社との激しい顧客獲得競争・・・市場環境の変化はますます予測困難なものとなっている。

 一方、技術革新のスピードも一段と加速化している。特に情報技術の分野では、製造業と比較すると、それほど大きな資本投資を必要としないため、次々と新しい技術が誕生している。

 ところで、製品とは様々な技術の固まりである。そして、製品の究極の目的は顧客ニーズへの適合、もっと広く言えば市場環境への適合 である。

 したがって、ある製品が成功するかどうかは、さまざまな技術の組み合わせが、市場投入時の市場環境にぴったりとはまるか、にかかっている。この、市場環境に合わせて技術を適切に組み合わせることをテクノロジー・インテグレーション(技術統合)と呼ぶ。

 さて、このテクノロジー・インテグレーションは、対応が困難な課題を抱えている。それは、製品コンセプトを固め、多種多様な技術の中から適切な技術を選び出す時期と、市場投入時期に時間差がある、という点である。

 つまり、製品コンセプト決定時点では適切であった技術が、市場投入時点では市場環境が大きく変わってしまっており、まったく通用しないということが起きるのだ。この典型的な失敗例が衛星を使った携帯電話サービス「イリジウム」であろう。製品コンセプト段階では、通常の携帯電話が現在ほど普及するとは予想していなかったのが失敗の最大の要因であった。

 では、製品コンセプトを固め、技術選択をするタイミングと市場投入のタイミングの時間差を可能な限りゼロに近づけるにはどうしたらいいのか?

 ひとつは、開発期間の短縮である。開発期間が短縮できれば、製品コンセプト確定をぎりぎりまで遅らせることができる。つまり、それだけ、市場環境に適合した、適切な技術選択ができる可能性が高くなる。

 もうひとつは、開発コンセプトを決定したら、ともかく製品に近いレベルのものを制作し、市場テストをやることである。そして市場テストの結果を製品コンセプト自体の修正に反映させる。つまり「コンセプトの確定」→「開発」とリニアに進めるのではなく、コンセプトと開発を行きつ戻りつしながら、市場に投入する方法である。

 これは、変化のスピードが半端ではないIT(情報技術)分野では極めて有効なな方法となっており、いわゆるソフトウエアのα版、β版、製品版と進めていくのが典型的である。

 ただし、この手法は、市場と継続的にコミュニケーションしながら、知識を蓄積し、創造し、活用していくという、ナレッジマネジメントの適用が不可欠である点を忘れてはいけない。適切なナレッジマネジメントがないと、不適切・不十分な情報に基づく「間違った技術選択」をしてしまうからである。

 テクノロジー・インテグレーション成功の鍵は、ナレッジマネジメントの活用にある。

*この拙文は、「技術統合」(マルコ・イアンシティ著、NTT出版)を参考としました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/475712029X/qid=1036053945/sr=1-5/
 
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