Weekly Matsuoty 2000/10/16
ミスミ
 
 ミスミは、金型用部品、FA用部品等をカタログ通販によって販売する商社である。

 95年頃、メーカーサイドではなく、購買サイドの視点からビジネスを展開するという意味での「マーケットアウト」を標榜し、「販売代理店」ではなく「購買代理店」と自らを称して、マスコミでも盛んに取り上げられたことを覚えている方も多いと思う。

 当時、彼らが、起業家発掘を目的として主催したセミナー形式の勉強会「グローバル・イノベーターズ・フォーラム」の第一回に私が参加し、直接ミスミの思想・哲学に触れることができたのは幸運だった。

 そのころのミスミの年商は200億円程度、社員数は約200人だった。それからしばらく彼らの動向を追っていたのだが、一見すると不思議なことが起こっていた。

 95年以降も、今日まで続く景気後退下にも関わらず年商を毎年着実に伸ばしていたのだが、社員数がどんどん減少していたのだ。私の記憶では、160名程度までは減っていたはずだ。常識的には、売上増に伴い社員数も増加するのが普通であるにも関わらず・・・。

 実は、これはリストラとかではなく、経理部問や情報システム部門を廃止して丸ごとアウトソースした結果である。最近も、コアコンピタンスに経営資源を集中し、それ以外の機能をアウトソーシングすることの重要性がよく言われるが、ミスミは既に5年前に「実践」していたのである。

 また、当時「チーム制」を導入したのも大きな注目を集めた。これは、毎年組織をゼロベースに戻して、組み直すというものである。チームリーダーは、事業計画プレゼンの優劣で選ばれ、また各チームへの参加も基本的には社員が決定することができる。これは、環境変化への適応を図るための柔軟な組織を維持するための仕組みだが、当時の人事担当者は、「本当にうまくいくかどうかはやってみないとわからない」と言っていた。先例もないし、仕組みの確立は手探りで進めざるを得なかったからだろう。

 ミスミのやり方がすべてうまく行っているわけではないと思う。会社の方針に納得できなくて辞めていく人もいたし、またついていけずに辞める人もいた。

 ただ、2000年現在の彼らの業績を見ると、年商500億円を突破する見込みであり、社員数も若干増加しているものの、230名である。なんと社員一人当たりの売上が2億円という、とても信じられない成果を上げている。企業組織として見る限りにおいて、これだけの優れた経営を達成しているところはほとんどない。

 こんなミスミを見て思うのが、やはりリーダーシップの重要性である。独自の思想を打ち出し、それにこだわり、他がどこもやっていない新しいやり方、仕組みを断固としてやりぬく。

 これは経営者、経営陣が強い意思と決断力・行動力を持っていない限り決してできないことだ。

 理想的な企業組織の生きた事例としてミスミから学べることは実に多い。
 
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