Weekly Matsuoty 2001/02/06
臨機応変のビジネスモデル
 
 今は功なり名を遂げた、成功した起業家たちの創業当時の話を聞くと、とりあえず会社を立ち上げたものの、どんな仕事をやるのか、まるで何も決めていなかった、という大胆な方々がかなりの割合でいる。

 彼らは、ビジネスモデルというものを全く考えもしないでビジネスを始めてしまったわけで、なんともはや、無謀で向こう見ずである。まあ、起業をするような人間は、後先考えず突っ走るようなところがないと、つらい創業期を乗り越えることが難しいとは思うのだが・・・。

 ところで、ビジネスモデルは、これまで何度か指摘したように次の3つの要素から構成される。

1. ストラテジーモデル

  どの事業領域で、どんな顧客に対してどんな価値を提供するのかを決めること

2. レベニューモデル

  ストラテジーモデルから、どのような具体的な手段で収入を生み出すのかを決めること

3. オペレーションモデル

 ストラテジーモデル、レベニューモデルに基づき、具体的な日々の業務プロセスを設計すること

 これら3つの要素のうち、実際に事業を始めてみないとどう転ぶかまるで予想がつかないのが、2. レベニューモデルと、3. オペレーションモデルである。1.のストラテジーモデルは、「自分がこうしたい」という思い(必要条件)であるのに対し、それを事業化するための十分条件である、レベニューモデルとオペレーションモデルは、相手(顧客)がいることなので、事前に夢描いた通りに展開することはまず、ありえないからだ。

 さて、先ほどの無謀な起業家の話に戻るが、創業当時にビジネスモデルが存在していなかったにも関わらず、事業を拡大していけた理由は、徒手空拳にもひるまず、顧客ニーズを必死で探り、また掘り起こし、自分の持ち味を活かしてそのニーズを解決できるような、なんらかの価値あるものを誠意を持って提供してきたからである。つまり、早い段階でストラテジーモデルを自然発生的に組み立てているのだ。

一方、どうやって儲けるのか、どうやって日々の業務を回していくのか、については実に柔軟に、臨機応変に組み立ててきている。

 結局のところ、ビジネスモデルのキモは、「ストラテジーモデル」の良否、またそれに対するこだわり、思い入れであり、レベニューモデル、オペレーションモデルについては朝令暮改を恐れずどんどん現状(特に顧客の要請)に合わせて変えていくことで事業の最適化を図っていくことが大切なのだ。

 こだわるべきところと、臨機応変に変えていくべきところの見極めが成否を分ける鍵である。
 
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