Weekly Matsuoty 2001/02/27
ハードアプローチ/ソフトアプローチ
 
 どんな業務においても、成功のカギは、目的・目標を明確に定めることである。

 と言うのはたやすいが、実際の現場で発生するさまざまな業務の多くは、関係する部署が複数存在し、それぞれの立場で勝手な思いをぶちまけるので、なかなか関係者全体が納得できる、統合された目的・目標を設定するのが難しいいのが現状だろう。

 特に日常業務ではない、期間限定プロジェクトの場合、なんらかの問題解決、または課題達成を狙いとして立ち上げられるものだが、「どう解決するか」「どう達成するか」という具体策にいきなり話がジャンプし、しばしば、「俺たちが解決しようとしている問題はそもそもなんだっけ?」となることがある。

 ところで以前、問題解決の方法として「OR:オペレーションズリサーチ」が一世を風靡した時期があった。これは問題が明確な場合に、最も効率的・効果的な解決策を数学的手法で提示してくれるもので、アポロ計画等で成果を上げたことで有名だ。

 ところが、技術革新のスピードが速くなり、社会環境も大きく変化しつづける近年は、ORの手法ではうまくいかないことが多くなってきている。なぜなら、問題が複雑になってきたために、融通の利かない「ハードアプローチ」では使える答えが得られないからである。

 そこで、ORのような「ハードアプローチ」に替わる問題解決法として、以前紹介した「ソフトシステムズ方法論」のようなソフトアプローチが登場したのである。複雑な問題解決において大事なことは、「HOW」、つまりどうやるかを考える以前に「WHAT」、何をやるか、「WHY」、なぜやるのか、ということについて徹底的に議論し、プロジェクト全体での合意できる目的・目標を見つけるプロセスをきちんとやる必要がある。この部分に着目したのが「ソフトアプローチ」である。

 ソフトアプローチでは必ずしもすっきりとした美しい答えが得られるわけではない。むしろあいまいさを残したままでいいし、プロジェクトの進捗過程においても、どんどん書き換えていくことが許される。なぜなら与件として考えていた外部環境が変わっていくし、プロジェクトの対象自体も自らの手で変化させつつあるからである。

 「ソフトアプローチ」は、ORのように専門家にまかせれば済むテクニックではなく、プロジェクト関係者全員を巻き込まなければならない、極めて泥臭いやっかいなテクニックではある。しかし、複雑な事象への対応は、やはりそれなりに複雑高度なツールを持って立ち向かわなければならないのだ。
 
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