Weekly Matsuoty 2001/03/14
ボキャブラリー
 
 ボキャブラリーと言っても、大学受験の頃に苦労した英単語のことではないのでご安心あれ。

 で、実はあいかわらずプロジェクトプランニングの話だ。プロジェクト成功の最大の鍵は、プロジェクトに関係する様々な要素を一本の串で串刺しにしたような、一体性・一貫性を与える明快な「コンセプト」を生み出すことができるかに尽きる。その明快なコンセプトは、プロジェクトに関わる人々にとっては最大の拠り所となり、求心力を生み出す元でもある。

 さて、この「コンセプト」、基本的には「言葉」で表現されなければならない。もちろん、身振り手振りや顔の表情でもコンセプトの意味合いを伝えることはできる。しかし、多数の人間に対して、継続的に影響を及ぼすためには、言葉として表現されることが必要なのである。しかも、プロジェクトの課題達成に向かって、人々の心を一つにするだけの力を持つ言葉であるためには、ハッとするような斬新な言葉、本質をえぐるような言葉であることが望ましい。

 「口コミ」とは言い古された言葉だが、Eメール等、インターネットを活用した、高速・広範囲のコミュニケーション力を持つマーケティングは、「バイラル・マーケティング」という言葉によって、新たなコンセプトを得た。それはマーケティング業界の意識・行動様式を少なからず変えようとしている。

 また、「携帯電話」が、いつしか「携帯」となり、さらに「ケータイ」とカタカナで表現されるようになったた時、そこには新たな意味が付与され、広がりのあるアイディアがわいてくる。

 言葉遊びと思う方もいるかも知れない。しかしヒトは、言語を獲得することによって、抽象的思考能力を得た。そして社会生活においては、その能力を常時利用してコミュニケーションを行っている。言葉で考え、言葉で回りの人々を巻き込んでいくスキルが必要なのである。

 確かに、言葉遊びに陥らないように注意する必要がある。しかし、新しいコンセプト、すなわち明快で斬新な言葉を生み出すことがプロジェクトを推進するパワーとなる。さらに言えば、当初のコンセプトに拘泥することなく、状況の変化に応じて、コンセプト自体を変えつづけることができなければならない・・・。

 では、どうやってそんな優れたコンセプトを生み出すことができるようになるのか・・・。

 私にはそれを答える資格はあまりないので、例によって、慶応大学助教授妹尾氏の言葉をそのまま引用すれば、それは「ボキャブラリー」(語彙力)をつけることだと言う。具体的には大量の本を読み、様々な人々に出会い、飲み語ることだ。別に飲まなくてもいいが(^_^) 、他人の言葉をまずは貪欲に吸収し、ボキャブラリを蓄積する。

 新しいコンセプトを生み出すためには、まずは豊富な言葉の泉を自分の中に持つことが必要なのである!
 
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