Weekly Matsuoty 2001/10/16
プロデューシング
 
 最近、新規ビジネスのプロデュースをやらせていただく仕事が多くなってきた。これは以前から、私が一番やりたかった仕事なので実にありがたい限りである。今回は、プロデューサーとしてはまだまだ未熟ではあるが、プロデュースという仕事の中味についてお話してみたい。

 ちょっと気取った言い方かも知れないが、プロデュースをすること、つまりプロデューシングとは、「夢を形にすること」である。

 ここで「夢」というのは、当事者が持つビジョンや目的のことである。ビジョンや目的を達成するための方法として、具体的な事業内容がある。これは「事業戦略」としてまとめられる。さらに売上・利益を上げるためのプラン、それは財務計画として作成される。
 さて、プロデュースが必要となるのはこれからだ。「事業計画」は、夢を詳細に語ったものではあるが、これだけでは夢を形にするための行動に起こせない。

 夢を形にするためには、「実現計画」が必要である。それは大きくは5つの要素からなる。

1  やらなければならない項目を詳細に列挙した「タスクリスト」
2  タスクリストの各項目に開始時期、終了時期を割り当てた「実行スケジュール」
3  タスクリストのうち、費用が発生するものについての「予算配分」

 まず、この3項目を明らかにした後、次の2項目を決める。

4  タスクリストの各項目を実施する担当者を割り当てる「実施体制(役割分担)」
5  タスクリストの各項目のそれぞれをどうやるかの詳細を決めた「タスク仕様」

 ここまで決めると、夢を形にするためのプロジェクトが動き出す。ビジョン、あるいは夢、言い換えると「ゴール」に向かって、

「何をやるか」(what)、
「どうやるか」(how)、
「いつやるか」(when)、
「いくらでやるか」(how much)、

が明確になったからである。したがって、プロジェクトメンバーは自律的に動くことができる。そして、プロデューシングとは、これらの一連のプロセスを円滑化する支援者である。

 さて、実際のプロデュースの経験からわかってきたことがある。夢を形にするプロセスにおける最大の難関は「入口」と「出口」にあるということだ。

ここでいう、「入口」とは「タスクリスト」のことだ。まず、具体的にどんな業務が必要なのかを列挙するのは簡単ではない。例えばWEBを核としたビジネスの場合、基本的には次の6つの分野について、やるべき業務を洗い出す必要がある。

1 コンテンツ
 (お金を取れる中味そのもの)

2 情報システム
 (コンテンツをユーザーに届ける仕組み)

3 フロントエンド・オペレーション
 (コールセンターなどの業務)

4 バックエンド・オペレーション
 (顧客DB管理、物流などの業務)

5 オンライン・マーケティング
 (オンラインでのマーケティング活動)

6 オフライン・マーケティング
 (オフライン、つまり新聞・雑誌広告などのマーケティング活動)

 これら各領域の個別の業務をすべて整合性のある形で揃えることができないとビジネスは回っていかない。したがって、それぞれの業務にどれだけのお金を使うかという予算配分も重要なポイントになる。(これまたとても難しい、なぜなら唯一の正解がないから)

 次に「出口」というのは、実際の業務活動段階でのトラブルシューティングのことだ。夢を形にするためのプロセスは、一言でいえば、様々な障害をひとつひとつ取り除いていく仕事である。それこそ日々、さまざまな障害(問題)が発生する。その原因の多くは、知識不足、情報不足、経験不足による段取りの悪さであるから、この部分でもプロデューサーの力量が問われる。

 私自身、自分の能力のなさに対するくやしさを日々感じながら、しかし「ベストを尽くす」「あきらめない」という強い意志を持ち続けようとすることで、かろうじてこなしているレベルに過ぎない。

 結局のところ、プロデューシングとは「プロジェクトマネジメント」なのだが、夢を形にするプロセスほど面白いものはない。つらいけど楽しい、そんな仕事だ。
 
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