Weekly Matsuoty 2001/12/05
効果と効率
 
 「効果」とは、所定の目的が、どれだけ達成されたかの度合いである。ゴールにどれだけ近づけたか、と言えるだろう。

 一方、「効率」とは、その目的の達成に当たって、どれだけ少ない費用・時間・手間で済んだか、の度合いである。ゴールに近づくのに、どれだけ安く、早く、楽にできたか、ということだ。

 上記のように書くと、まず「効果」があって「効率」がある、と言うことおわかりだと思う。目的の達成なくして、効率を語るのは無意味である。

 ところが、現実には「効果」ではなく「効率」が先に立ってしまっているケースが多い。典型的なケースが、以前の牛丼の「吉野家」である。

 「吉野家」のおなじみのスローガンは、「うまい・早い・安い」である。「吉野家」にとっての「効果」とはおいしい牛丼を提供することによって、顧客に牛丼を食べる喜びを実感してもらうことである。しかも、早く、安く!

 そう考えると、このスローガンはまさに、「効果」である‘うまい’が先にあり、次いで「効率」を示す‘早い’‘安い’が続いている点で、素晴らしいキャッチフレーズであった。

 ところが、一時期、効率を追及するあまり質の悪い原材料に切り換えた。その結果が、客足が遠のき、倒産(会社更生法の申請)に至るという事態である。今、見事に復活し、ビジネス街への躍進も目覚しい「吉野家」にも「効果」と「効率」の位置付けを間違えてしまった過去がある。

 さて、米国テロ事件後も好調な業績を維持する「サウスウエスト航空」は、「効果」と「効率」の位置付けをよくわかっている企業の一つだろう。
br  同社は、機内サービスなし、格安チケット、といった点がよく知られているが、定時離着陸率の高さや、ユーモアあふれる社員のサービスといった、そもそも飛行機の乗客が求める「運行時間の正確さ」「心のこもったサービス」のような「効果」をまず満たした上で、顧客にとっての「効率」も提供できていることが勝因である。

 そういえば、業績不振の企業に乗り込んで、業績を急激に回復させる雇われCEOの常套手段は、リストラクチャリング、つまり人員削減によるコストの大幅圧縮である。これは「効率」を先行させた方法であり、確かに一時期は業績が回復するが、貴重な人材の流出を招き、再び業績不振に戻ってしまう。

 一方、「効果」と「効率」の違いをよくわかっている一流の経営者はそんなことはしない。労働組合にボーナスの満額回答をした日産社長カルロス・ゴーン氏、買収した業績不振の企業の社員に対し、まず雇用維持を約束する、現代の再建の神様、日本電産社永森重信氏。

 まず、ゴールにどうやったら達成できるかを考えることが大切である。その上でどれだけそのプロセスを効率化できるかを考えることが大事だ。

 効率を高める方法は、いろいろとあり、手をつけやすいので、つい、効率向上策ばかりに目が行ってしまいがちだが、果たして目的に対して今の行動=手段がそもそも正しいのかを冷静に見つめる必要があるだろう。
 
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