Weekly Matsuoty 2002/02/13
デュアル・ストラテジー
 
 「デュアル・ストラテジー」とは、1995年に翻訳・出版された経営戦略の本のタイトルだ。内容はたいしたことはなかったのだが、この言葉はいつも頭に引っ掛かっている。

 「デュアル」とは、経営が持つ二面性のことである。ひとつは、今、目の前にあるチャンスを掴み利益につなげていく「現在志向」、もうひとつは将来の経営環境の変化に備える「未来志向」である。

 この本によれば、「現在志向」の計画策定は、‘結果’についての管理であり、「未来志向」とは、‘変革’についての管理としている。また、「現在志向」の計画策定は、‘組織化’を要求するが、「未来志向」の計画策定は、‘再組織化’を要求する。

 私がこの言葉が気にかかって仕方がないのは、相互に矛盾する関係になりがちなこの2つの志向を両立させるのは、極めて難しいという現実に常に直面しているからである。読者の皆さんの多くも同じ思いを持たれるのではないだろうか?

 おそらく、ほとんどの企業は「現在志向」である。つまり、目先の売上・利益が最優先だ。「未来志向」に立つ場合、しばしば、すぐにはリターンを生まない、人、時間、金等の「投資」という行動を取ることになるが、これは明らかに今の売上・利益を低下させるものである。また、過去の行動の結果としての「成功体験」は、それを変革する意欲を阻害する。

 しかし、「現在志向」の戦略だけでは、急速な環境変化にいつしか適応できなくなり、淘汰される日が来る。だから、経営者は、意識的に、「現在志向」の戦略と「未来志向」の戦略を並行して走らせ、両者のバランスをうまく調節する努力が必要である。経営戦略は同時に2つ必要なのだ。「デュアル・ストラテジー」である。

 さて、上記の考え方は個人にとっても重要な示唆を与える。「今」を大切に生きることも重要だ。しかし、同時に未来の「夢」が、「今」をより一層価値のあるものにしてくれる。

ここにこんな格言がある。実は、この拙文を書こうと思ったきっかけのフレーズだ。

Dream as if you'll live forever,
Live as if you'll die today.

‘永遠の命があるがごとく夢を持とう
今日限りの命と思って生きよう’
 
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