Weekly Matsuoty 2002/03/05
ビジネス=サービス
 
 大手戦略コンサルティング会社に勤める友人によると、一流と言われるコンサルタントには、人格的にクセの強い人が多いそうだ。これは婉曲的表現であって、率直に言えば、部下として働くと、かなりつらい思いをするということらしい。しかし、コンサルタントに求められているのは、頭の回転の速さ、弁舌の滑らかさであって、優れた人格ではないから、それでいいのだと友人は言う。コンサルタントに、いわゆる「ヒューマンスキル」は不要なのである。

 「そんなもんかなあ・・・ただ優れた仕事をすれば良いというものではないんじゃない?」と、やや釈然とした思いを私は抱いていたが、最近発刊された「プロフェッショナル・サービス・ファーム」を読むと必ずしも友人の言っていることが正しいわけではないことがわかる。

 同書は、コンサルティングファームの運営やマーケティングノウハウを詳細に解説した稀有な本なのだが、こんな簡潔なエピソードが出てくる。

 あなたが自家用車を近所の修理工場に出した。修理後、隣人がこう聞いてきた。

「その修理工場は、ちゃんと修理したか?」

「遅滞なく修理されたので、良い仕事をしたと思うよ」

隣人は重ねてきく。

「サービスは良かったか?」

 ここで「サービス」と呼ばれている言葉の意味あいが重要だ。それは顧客に対する「心配り」だろう。誰もが気付いていることであり、また私も繰り返し言っているのだが、もはや、仕事自体の質だけで製品・サービスが選ばれることはほとんどない。自社製品・サービスと同程度の競合製品・サービスは山ほどある。優れた仕事をすることは、顧客を満足させるための必要条件ではあっても、十分条件ではない。

 上記の本では、このように明確に言い切っている。

 「最終的にクライアントである私が探しているのは、私と私の課題について働くために、「スキル」と「手助けをする誠実な願望」の双方を保有している稀なプロフェッショナルである。感情移入が鍵である−私の世界に入り、私の目を通して見る能力である。」

 そうそう、その通り。ビジネス=サービス、つまり顧客に喜んでもらい、満足してもらうことを自分の喜びにすることのできる「誠実な心」が、どんな仕事にも不可欠なのだ。
 
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