「リアル・オプション」とは、最近注目されている、事業価値を評価する新手法だ。金融工学のオプション理論がベースになっており、理屈はとても難しい。私自身も理解するのに苦労しているのだが、なんとかそのポイントをわかりやすく書くことにトライしてみる。
事業価値の評価は、「バリュエーション」と英語そのままで呼ばれることが多いのだが、例えばスタートアップのベンチャー企業の事業を評価した結果、「20億円」だったとすると、この評価額は、当該事業がこれから生み出すであろう収益を見込んだ「現時点での価値」(現在価値)を表している。
そして、この現時点での「事業価値」20億円に基づき、事業の責任者は、当該事業に対する投資を行うことが妥当か否か、あるいは、いくらで買収すべきなのか、といった判断を下すのである。
通常、事業価値評価の方法というと、DCF(Discounted Cash Flow)法が一般的である。しかし、「リアル・オプション」がDCF法より優れている点がある。それは、事業価値評価に事業推進上の様々な選択肢(つまり、「オプション」)を織り込むことができる点だ。
事業評価にオプションの考え方を入れることで、不確実性が非常に高い事業、投資回収期間が長い事業、あるいは初期投資額が高額な事業に対して、投資可否判断に役立つ評価が出せるという。
上記のような事業を「DCF法」で評価すると、ほとんどが投資価値なしという結果になる。
したがって、「DCF法」は、柔軟性に欠ける手法と言えるのに対し、「リアル・オプション」は、経営の柔軟生を取り込むことのできるダイナミックな評価法である。
さて、リアルオプションで考慮される選択肢には次のような種類がある。リアル・オプションでは、このようなオプションがあること自体が、事業価値を高めることに寄与する。(なぜそうなのかというと、簡単に言えば、状況の変化に応じて打ち手を柔軟に変えることで、価値の最大化を図る可能性が残されているからである・・・ふう、こんな下手な説明でご理解いただけますか?)
・延期オプション⇒投資判断時期をずらすことが可能である。
・撤退オプション⇒撤退が可能である
・段階オプション⇒段階的な投資判断が可能である。
これ以上の難しい理屈は専門書に譲るとして、「リアル・オプション」の考え方はいろんなことに応用が効きそうだ。まさに不確実性の高いネットビジネスのような事業だけでなく、結果がなかなか読めないマーケティングキャンペーン(特に、ROIに厳しいダイレクトマーケティング分野)の評価にも適用できうるし、「キャリア」を考える際にも有効な考え方だと考えている。
例えば、望ましいキャリア実現のための転職は「今」行うべきなのか、それとも、延期すべきなのか、あるいは、現在の生活水準を維持しつつ、新しいスキルを磨くための段階的なステップとしてどのようなキャリア・パスが考えられるのか、といったことについて考えるための枠組みとして役立ちそうだ。それは、「キャリア・オプション」とでも呼べるものになるかも知れない・・・
とまた、なんでもキャリアに結び付けてしまう癖が再発したので、今回はこのあたりで。
「リアル・オプション」については、私の理解がもう少し進んだ時点で、また別の形で紹介したい。
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