1984年に、ニストローム=スターバックが書いた論文“To avoid organizational crises, unlearn”の主旨は、今知ると実に興味深い。
この論文で両氏は、アメリカの企業が設立から20年後には10%しか生き残っていないという統計データを示し、その理由を次のように結論づけている。
「企業の成功と失敗を分けるのは、危機や問題が発生した場合の、企業トップによる事態の受け止め方・対応の違いである。」
つまり、会社存亡の危機に直面した時のトップの判断が生死を決める、ということだ。
これを聞いて「雪印事件」を思い出さない方はいないだろう。雪印は、最初の事件はなんとか乗り切ったが、2度目の事件でとどめを刺された。実質的に企業解体の方向に向かっている。まさかあの雪印が・・・という思いは我々に共通のものではないだろうか。
直近では、「ミスタードーナツの肉まん事件」がある。これも、明らかに会社トップは対応を間違った。これでつぶれるとは思えないが、雪印と同様、口に入れる食品だけに、今後の対応次第ではさらに窮地に陥ることになるだろう。
さて、同論文では、危機を乗り切れない経営陣に共通する傾向を指摘している。
・組織の直面している問題になかなか気付かない
・問題に気付いても、問題の大きさを過小評価する傾向がある
・問題に気付いたほかの組織メンバーからの意見を拒絶・冷笑する
・問題の対応に乗り出す時も、皮相的、その場しのぎの対応でやり過ごそうとする
うーむ、雪印の元社長はじめ、ダメ社長はまさにこの傾向通りの反応をしていたではないか・・・。
実は、危機に直面していないからわからないだけだが、日本の大企業のトップにはこんなタイプがかなりの割合を占めているような気がする。もしも、貴方の直属の上司が上記のような傾向があるとすれば、おそらくトップも同じであろう。
このような経営陣の問題の根源は、既に妥当性を失ってしまった知識や価値観の存在とそれに基づく行動であり、経営陣は、それらを捨て去り(アンラーニング)して、新しいものに置き換えることが必要である。しかしこれがわかっていてもなかなかできないのが人間だ。
逆に言うと、経営トップに最も求められる資質、それは妥当性をなくした過去の知識・価値観を捨てさることのできる力量、すなわち「アンラーニング力」だといえるだろう。
平凡な結論だが、なかなか実践できないから、繰り返し声高に言う必要があると思うのだ。
(参考)組織学習と組織内地図 安藤史江著 白桃書房
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