米国の銀行のATMは、なぜ24時間利用可能
なのかご存知だろうか?
それは、払い出しの処理をオフラインで
行っているからである。つまり、預金残高の
照会をリアルタイムでやらない。だから、自
分の預金残高が100ドルしかなくても、それ
以上、例えば、500ドルでも引き出せてしまう。
(ただし、1日当たりの最高限度額は設定さ
れているので、10万ドルとか引き出すのは無
理である、念のため。)もちろん、残高以上
引き出したお金をちゃっかりネコババできる
ほど甘くはない。その分は借金扱いとなり、
後日請求書が送られてくるそうだ。
このやり方は、悪用する人が必ずいるだろう
し、貸し倒れも当然ながら発生しているだろ
う。しかし、米銀の考え方は、ATMを24時
間稼動することによる顧客サービス向上が利
益をもたらすものであり、貸し倒れリスクに
関わるコストを上回ると考えているのである。
利益が出る限りにおいて、一定の損を許容し
ていると言える。
一方、日本の銀行では、夜間に外部との取引
を停止して、さまざまな取引データをバッチ
処理(一括処理)しているため、リアルタイ
ムでの残高照会はできない。しかし、オンラ
インで残高照会した上で払い出しを行う原則
は崩さない。だから、ATMの24時間稼動は
実現しないのである。
ここには、日本の銀行らしい発想、すなわち
「損を出さない」「ダウンサイドリスクを取
らない」という基本姿勢が現れている。企業
に対する融資の審査における担保主義、ある
いは、社長に対して個人保証を求めることと
共通した姿勢である。
しかし、現実には、「損を出さない」という
消極的な姿勢が、かえって巨大な損失を招く
結果になったことは、現在の大手銀行の窮状
を見ればよくわかることだ。
ビジネスとは、そもそも利益を出すために一
定のリスク(=コスト)を取ることである。
この基本原則を忘れ、リスク回避を最優先す
るようになるのが、日本の銀行をはじめとす
る肥大化した企業組織の習い性なのだろうか?
次回は、この基本原則に立ち戻った企業の事
例を紹介したい。
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