以下は、日経情報ストラテジー最新号(6月
号)から拾った記事だ。
自動車のキズやへこみを直す軽板金修理店の
フランチャイズチェーン、「カーコンビニ倶
楽部」は、増え続ける電話での問い合わせの
対応に苦慮していた。24時間体制で常時2−6
人のオペレーターを待機させていたが、それ
でも受けきれない。「話し中」になることが
多くなり、顧客の不満が高まっていた。しか
し、オペレーターの人件費は月額200万円を
超えており、これ以上、人を増やすわけには
いかない。人を増やさない方向での解決策が
必要だった。
そこで、担当者は、IVR(双方向音声応対装置)
の導入を決定する。電話をかけると、コン
ピュータ音声が、目的別の番号を押すように
促すアレだ。初期投資2000万円をかけたIVR導
入後、随時オペレーターを減らし、2002年2月
にはついにオペレーターをゼロにした。月額
200万円のコストダウンに成功したのである。
ところが、カーコンビニ倶楽部の尾上正志社
長は悩み始める。味気ないコンピュータ音声、
面倒なボタン操作。果たして顧客サービスと
いう点において、IVR導入は正しい経営判断
だったのだろうか?
彼は、この疑問に「NO」の結論を出す。そし
て、再びオペレーターを採用した。IVRも併用
するものの、人の肉声での対応も再開したの
である。つまり、目先のコスト削減は間違い
であり、顧客サービスという売上げの先行指
標に対してコストをかけるべきという決断を
尾上氏は下した。
これは、カーコンビニ倶楽部が創業まもない
会社であり、尾上氏の独断が許される状況に
あったからできたことかも知れない。同様の
決断が、ビジョンに欠け、リスクを取らず、
損を出さないことを優先する、日本の銀行の
ような企業の社長にできるだろうか?
企業とは、極論すれば「売るシステム」(仕
組み)である。これは、研究、開発、生産、
営業、サービス、人事、総務など様々な機能
を果たすサブシステムから構成される。サブ
システムの中には営業のように直接的に売上
げとの関係が明確なものもあれば、経理のよ
うなスタッフ部門の場合、まさに間接的にし
か売上げとの関係を見ることはできない部署
もある。
したがって、どの機能にどの程度の予算と人
員を配置した場合に、全体として最適なシス
テムとなり、もっとも高い成果=売上げが上
がるのか、を判断するのは極めて高度なビジ
ネススキルである。そして、当然ながら、こ
れこそが、経営層に求められている役割であ
る。
もし、こうした会社というシステムの設計義
務を果たさず、社長が
「売上げ拡大」「コスト削減」
としか吠えることができないならば、以前も
書いたが、小学生に道を譲った方が良い。
「最終成果」だけを唱えるのは、小学生でも
できるからである。
|