人材派遣業最大手、スタッフサービスの躍進
は注目に値する。1985年には100億円程度だ
ったが、2004年3月期には約2400億円の売上
を見込んでいる。3年前、業界1位の座から
から2位に転落させたパソナを現在は1000億
円あまり引き離し、単独トップの座を固めつ
つある。
スタッフサービスと言えば、サラリーマンの
悲哀を感じさせるTVコマーシャルの印象が強
い。しかし見かけの軽さと対照的に、スタッ
フサービスの経営・マーケティング戦略は、
きちんと成功要因を見極めた、地に足のつい
たものである。勝って当然の戦略を実行して
いるのである。
さて、スタッフサービスの派遣ビジネスに対
する基本認識は、次の通りである。(私の推
測も一部含まれている点、ご了承いただきた
い。)
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1. 常に合い見積もり
どの企業も複数の派遣会社に声をかけている。
声をかけるかどうかは、その時の担当者の気
まぐれであることも多い。
2. 派遣社員の質は差別化の要因にならない
派遣社員は、複数の派遣会社に登録しており、
人材の流動性が高い。独自の能力を持つ派遣
社員を抱え込むことは難しい。
3. 派遣料金に加えて、対応スピードが重要
契約期間が長期化しているとは言え、やはり
派遣社員に対するニーズは、短期の業務や急
な欠員の補充といった急を要する場合が多く、
必ずしも派遣料金はそれほど重要ではない。
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上記のような基本認識を踏まえて、スタッフ
サービスの基本戦略においては、「スピード
経営」を成功要因として考え、その実現に徹
底的に力を注いだ。行動レベルで実現してい
るスタッフサービスの特徴は次の通りである。
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1. 営業マンは1日40社を回る(都内の場合)
これだけの機動力を保持していることにより、
クライアントからの呼び出しに対して25分以
内に行くことを可能にしている。
また、こまめに企業を回ることで、突然発生
する新規派遣案件を捕捉する確率を上げてい
る。
2. 競合他社を意識した営業力配分
もし、競合他社がある特定の会社を月に2回
訪問していることがわかったら、スタッフ
サービスの営業マンは月4回行く。もし競合
他社が4回だったら、8回行く。常に競合を上
回る営業攻勢をかける。
逆に競合の力が余り及んでいないクライアン
トには労力をかけすぎない。
3. 引き合いを頂いたら、2時間以内に人選を
終了し、即日派遣社員を紹介。
どこよりも早く、適切な派遣社員を紹介する
ことで受注確率を向上。
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こうしたスピード経営を支えているのが、ま
ず、成果を出した営業マンに対する適切な処
遇である。(獲得件数に応じて報酬が決ま
る)
また、大量の広告宣伝投下を通じて獲得した
業界最大規模の登録派遣社員数(迅速適切な
人選のためには登録数が多ければ多いほど良
い)である。
こうして、スタッフサービスは「スピード」
を強みとしてクライアントに食い込んだ結果、
派遣料金は業界水準よりも高めであり、相対
的に高い利益率を享受している。
「業界他社では、派遣社員を使うメリットを
打ち出す提案営業をやっているが、そんなも
ので派遣社員の需要を増やせない」
こう語るのは、スタッフサービス取締役佐藤
治夫氏である。
業界の特性を正しく理解し、成功要因を見極
め、きちんと行動に落とし込めた企業は、必
然のごとく勝てるのである。スタッフサービ
スは、その格好のビジネスケースの一つだろ
う。
*本稿は、ITセレクト2.0、「西和彦 日本
のCIO」などの記事を参考にまとめました。
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