Weekly Matsuoty 2004/03/15
ビジネスはギャンブル
 
革新的な製品を次々と世に出してきた、日本 を代表する企業に勤める友人の話を聞くと、 大企業化した今、新規事業について「確実に 儲かるか」という、私に言わせれば不毛な議 論が繰り返されることが多いらしい。

誰も表立っては言わないが、どんなに厳密に やったとしても、将来予測が当たることはほ とんどない。まして、過去の経験値のない新 規分野において、確実な収益を得られるかど うかを証明するのは不可能である。なぜなら ば、将来には、どうころぶのか予測しきれな い不確実な要因が山ほどあるからである。

しかし、本来、ビジネスとは、不確実な要因 をリスクとして受け入れつつ、利益につなが ることを期待して、戻ってこないかも知れな い資源を投入する行為ではないか。すなわち、 固い言葉で言えば「投資」であり、平たく言 えば、「ギャンブル」である。そして、ビジ ネスをやる人は、「ギャンブラー」であると 言えるだろう。

ただ、注意して欲しいことがある。それは、 「真のギャンブラー」でなければならないと いう点だ。真のギャンブラーは、ギャンブル のコンセプトを理解した上でビジネスを展開 するのである。

さて、ビジネスにも通じるギャンブルのコン セプトとしては、次の5点が挙げられる。

1 自己の財産を使用する

本人のリスクでやるということである。

2 儲けることを目的としている

無目的ではないということだ。

3 計算された利益とリスクを持つ

確率論的な計算に基づく利益とリスクがある。

4 利益とリスクについては偶然性がある

つまり、確実に結果は予測できないというこ とである。

5 結果に対する責任は本人が取る

失敗した結果を他人に転嫁しないということ だ。

こうした、ギャンブルのコンセプトを理解し つつ、事業の成功に向けて邁進できる人こそ が、「起業家」と呼ばれる。そして、こうし た起業家たちが、新たなビジネスを生みだし、 社会・経済を変革していくことができるので ある。

一方、ギャンブルのコンセプトを理解せずに ビジネスを推進する人は、「空想的泡沫人」 と呼ばれ、例えば、80年代後半のバブルや、 ネットバブルに翻弄された人々である。その 結果、自己破産に至った人は、まだ自己責任 を果たしているが、大企業になると銀行や国 が救済し、最終的には、国民が彼らの失敗の 尻拭いをするという構図になっている。

こうした現状を考えると、ビジネス教育の一 環として、「正しいギャンブルのやり方」を 教えるのを必須にした方がいいのではないか と感じる。

実際、ギャンブルがうまい人は、ビジネスも うまいのである。(金儲けだけが事業の最終 ゴールであるのは望ましくないと思うが)

*本稿は、「ビジネスに生かすギャンブルの 鉄則」(谷岡一郎著、日本経済新聞社)など を参考にしました。
 
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