行き詰まりの打破や、新たな成長を目指し
て、企業再生に取り組む際、第一に着手さ
れることが多いのは、「リストラクチャリ
ング」である。
「リストラクチャンリング」とは、
“Re-structuring”
であり、「構造」の見直しを意味する。
すなわち、企業組織(体制)を見直し、部
門を統合したりすることである。これは、
概ね人減らしを通じたコスト削減を目的と
したものであり、短期的な業績改善にはプ
ラスだったが、優秀人材の流出により、長
期的には競争力の低下をもたらすケースも
多く見られた。
そこで、企業再生の新たな切り口(手法)
として提案されたのが、「リエンジニアリ
ング」である。
「リエンジニアリング」とは、
“Re-engineering”
であり、「機能」の見直しを意味する。
「リエンジニアリング」では、様々な業務
機能をゼロベースで見直し、顧客満足実現
のために最適な業務へと組み立て直す。こ
れは、業務フローにおけるボトルネックや
ムダを解消するものであった。
しかし、「リストラクチャリング」にしろ
「リエンジニアリング」にしろ、ある限界
があった。それは、‘HOW’の改善に止
まる点である。
例えば、音楽を聴くための媒体としてのレ
コードがCDに移行しつつあった時期に、
レコード針メーカーが、いくら組織構造や
業務機能を見直したところで徒労に終わる
ことを考えていただければおわかりだろう。
そこで、企業再生のためにはもうひとつの
視点が必要である。それは、「リオリエン
テーション」と呼ぶことができる。
「リオリエンテーション」とは、
“Re-orientation”
であり、「進むべき方向」の見直しを意味
する。「リストラクチャリング」「リエン
ジニアリング」が、
“我々はどうやって進むべきか”
を問うたのに対して、「リオリエンテーシ
ョン」は、
“我々は、どの方向に向かうべきか”
を問う。
これは、事業の意味を問うことである。
我々は、なんのために事業を行っているの
か、それにどんな意味があるのか、価値が
あるのか、逆に言えば、どんなことに意味
を見出すのかを突き詰めていく。
一言で言えば、事業の原点に立ち戻ること
である。
そして、真の企業再生のためには、どの切
り口から入ったとしても、最終的には
「リストラクチャリング」
「リエンジニアンリング」
「リオリエンテーション」
の3つの切り口から企業再生に取り組む必
要がある。
産業再生機構入りしたカネボウやダイエー
で、この3つの切り口がどのように実行さ
れていくのか、注意深く成り行きを観察し
てみたい。
*上記内容は、
「構想学」(妹尾堅一郎東京大学教授)
の講義をベースにしたものです。
「リオリエンテーション」のコンセプトは
妹尾教授によるもの。
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