Weekly Matsuoty 2000/01/24
顧客と企業の幸せな結婚生活
 
  顧客と企業が出会い、お互いを紹介しあう。とりあえずつきあってみる。いい感じなので何度も会い、お互いをより深く理解していく。そして、いよいよ顧客はその企業の製品を購入するに至る。

 このように喩えると、「販売」は「結婚」である。マーケティングは「仲人」である。顧客と企業の出会いの場を設定するのが仲人たるマーケティングであり、結婚に至るまでの二人の仲をとりもつのも、マーケティングである。

 しかし、「結婚」は、永遠(とわ)に続いて欲しいと願う「結婚生活」の始まりにしか過ぎない。

 幸せな結婚生活に大事なことは何か。それは「パートナーシップ」である。顧客と企業は、対等な立場で意見を交換しあい、2人が結びつくことによってのみ生み出される新たな価値づくりにいそしまなければならない。この新たな価値は、どちらか一方にのみ恩恵があるものであってはならない。同じ住居をシェアする同士として共通に追い求めるべき価値であるべきである。具体的には「Quality of Life」(生活の質の向上)である。お互いの可能性を広げ、自分がより自分らしく振舞うことのできる、精神的に解放された生活、これが「Quality of Life」の理想だ。

 ただし、「Quality of Life」を追求することは、自分たちさえ良ければいいというものではないことを忘れてはいけない。顧客も企業も社会・自然環境の一員であり、他の人間に迷惑をかけたり、自然環境を破壊することにつながる行動はお互いに注意しあう必要がある。

 ともあれ、対等なパートナーである以上、どちらかが受身であってはいけない。相手をよりよいパートナーとして育てなければならない。企業の問題を顧客はビシビシ指摘すべきだし、企業も一人よがりの製品開発を止め、もっともっと顧客を参画させるよう働きかけるべきだ。

 隠し事もいけない。「Quality of Life」の実現のために必要だと思う情報はためらうことなく公開し、理解を求めあう。もちろんお互いの信頼関係があってこそ、すべてを包み隠さず話せるのであるから、普段から誠意のある対応をお互いに示し信頼関係をコツコツと築いていく努力をする。

 さて、顧客と企業の「幸せな結婚生活」を実現すること、そのサポートをするのは、マーケティングではなく、結婚カウンセラーたる、CRM(Customer Relationship Management)である。顧客と企業との間のオープンで、継続的な、率直なコミュニケーションを促進し、誠意のある、裏表のない、一貫性のある対応を実現させる。その基本的な考え方や方法を教えるのがCRMの役割である。

 CRMにとって大事なことは、繰り返しになるが、「Quality of Life」の追求を目的として、顧客と企業が対等の立場で、パートナーとして協力しあえる環境を作り出すことである。ホームページを立ち上げておきながら、問い合わせ先メールアドレスを示していない企業は、パートナーとのコミュニケーションをはじめから拒否している。結婚しておきながら、幸せな結婚生活を築く努力を放棄しているどうしようもない奴だ・・・。

 と、まあ理想の結婚生活とは上に述べた通りだが、基本的に顧客は気まぐれで浮気っぽく、ちょっと気を許すとすぐ別のパートナーの元に走ってしまう相手なので、企業も苦労してるんだけれども・・・。
 
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