Weekly Matsuoty 2000/03/13
サービサイジング
 
 「人は、商品自体を買っているのではなくその効用(ベネフィット)を買っている」

 言われてみれば当たり前のことだと納得できるのに、普段忘れてしまいがちになるのがこの言葉である。ここで「効用(ベネフィット)」とは、究極的には、その商品を消費することによって得られる「心の平安」である。「心の平安」とは逆に言えば、なんらかの問題や不安が、除去されたり、軽減された状態である。

 例えば、食器洗い機を買って手洗いの手間がなくなった場合、自分の時間が食器洗いに取られて、自分の時間が減る、という問題が解決されたことになる。

 ところで「不安」とは、よく考えてみると将来について思い煩うことである。現在目の前に存在しているものは「問題」として扱う。ただし、商品の購入によって現在の「問題」を解決したとしても、その商品が壊れたりした場合、たちまち問題が再発してしまうため、あいかわらず(将来に対する)不安は残ってしまう、という点がポイントである。上記の例で言えば、食器洗い機が壊れたら、また自分で手洗いしなければならない、という不安は解消されていないのである。

 したがってマーケターは、現時点での問題の解決策となる効用に加えて、将来の不安を軽減する「何か」を同時に顧客に対することが求められる。

 その「何か」というのが「サービス」である。商品ではなく、サービスを売る企業にとってはサービス後のサービス、いわゆるフォローサービスを一つのパッケージとして提供していくべきなのである。最近、日本でも一部の小売店でやっている、無条件での返品サービスや、最低価格保証サービスは、まさに将来に対する不安を軽減してくれるサービスとして、消費者の財布を緩めさせる効果を発揮している。

 このように、現状での問題を解決してくれるだけでなく、その後に生じるかもしれない問題(つまり不安)への対応が可能なサービスを併せて提供していくことを、「サービサイジング」と言う。ただし、これからの「サービサイジング」はより高度なものが求められている。食器洗い機の例なら、単なる保証書がついているだけではもう駄目かもしれないのだ。

 「サービサイジング」は、(将来の)不安を除去しようとする、消費者のリスク低減行動に強くアピールすることができる。今、多くの企業で、商品自体だけでなく、その商品を取り巻くサービスに力をいれるようになってきたのは、「サービサイジング」なしにはもう生き残れないことに気づいたからである。

 さて、あなたの会社は、「サービサイジング」の発想でビジネスモデルを組み立てているだろうか?
 
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