Weekly Matsuoty 2000/03/20
ロイヤルティのジレンマ
 
 顧客のニーズに応える。顧客は満足する。ロイヤルティ、すなわちその製品・サービスに対する信頼感が萌芽する。  しばらくして、満足した顧客が再び戻ってくる。その顧客のニーズにまた応える。顧客は再度満足感を得る。ロイヤルティは大きく育ち始める。

 ロイヤルティは、毎回の取引きが需要者、供給者の双方にとって利益をもたらすような、継続的なコミュニケーションから生まれ、育まれ、強化される。
 もちろん、「双方にとって」とは言っても、まずは、需要側のニーズを供給側が満たすことが先決である。ただし、供給側が留意しなければならない点がある。

 それは、ある取引きで満たされたニーズは次回からは提供されて当たり前であり、さらに高度なニーズを顧客が示してくる、ということである。つまり、期待水準が取引きを重ねるごとに高くなるため、その水準をクリアするのがとても大変になるということだ。

 ニーズに応えれば応えるほど、対応が難しくなっていく。まるで走り高跳びで、永遠にバーが上げられ続けるようなものである。そして、ある時点でバーを落としてしまうと終わり。顧客は離れていく。

 顧客のニーズに必死になって応えようとするほど顧客が離れやすくなる。これは「ロイヤルティのジレンマ」だ。残念ながら、このジレンマから逃れる術はない。顧客ニーズを的確に拾い、企業経営を常に研ぎ澄まし、とにかくバーを落とさないように高いところをめがけて飛び続けるしかないのである。

 なお、ロイヤルティを維持する努力だけでは顧客を繋ぎ止めることができない、そんな構造的変化が時折、企業を襲うことがある。ニーズそのものが全く違う次元に移ってしまう、すなわち持続的な変化ではなく破壊的な変化が起きた場合、ニーズ対応の方法自体を変える必要がある。実は成功した企業ほど、このような変化への対応が困難であるという。これは「イノベーターのジレンマ」である。

 企業は、「ロイヤルティのジレンマ」には真っ向から挑むべきだが、「イノベーターのジレンマ」には陥ることのないよう、注意深い組織運営を行う必要がある。

*イノベーターのジレンマについては、「イノベーションのジレンマ」(翔泳社)を参照されたい。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798100234/qid=1036486331/
 
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