Weekly Matsuoty 2000/04/11
レコメンデーション
 
 居酒屋に入ると、「今日のおすすめ」とか壁に貼ってある。「ほたるいかの刺身」「ほや貝」など普段はお目にかかれないない珍品があったりするが、別に私の嗜好に合わせて準備してくれたわけではない。

 おおむね、「お客さん、これはおすすめですよ」と言われても、それは店側が売りたいものであって、自分のニーズに合致したものをすすめてくれていることは希である。

 考えてみると、おすすめ=レコメンデーションには、「売りたいからおすすめ」の場合と、「あなたの求めているものだからおすすめ」の2種類あり、当然のことながら後者の方が顧客の満足度が高い。

 なんだ、そんなの当たり前じゃないか、と思われるだろう。しかし、実践することはどんなに大変か・・・。

 顧客が求めていることを知るためには、相手に聞けばよい。あるいは過去の購買履歴を調べれば良い。One-to-Oneマーケティングの基本はここにある。しかし、相手が10人ではなく、10万人だったらどうするか。しかも全世界に散らばっていたら・・・。

 データベースを核とする情報技術は、結局のところ、人手では処理できない多数の顧客のデータを蓄積し、よりよい「おすすめ」をすることである。

 この「おすすめ」というアクションのために顧客データを蓄積し、活用できるようにする、ということをCRMの設計に当たっては決して忘れてはいけない。ちゃんとした「おすすめ」ができないのに余計なことを顧客に聞いてはいけないし、むやみとデータをため込んでもいけないのである。

 ところで、おすすめ=レコメンデーションには別の切り口もある。「あなたと嗜好が似た人が買ったのであなたにもおすすめします」という方法だ。これは、消費行動を規定する要因が似ていれば、同じような消費行動をとる、という仮定にもとづくものである。相手に直接欲しいものを聞いて、おすすめすることを「リアクティブ」(反応的)レコメンデーションとすれば、このような方法は「プロアクティブ」(先取り的)レコメンデーションであるといえる。

 プロアクティブなレコメンデーションはつぼにはまれば実によく効く。なぜなら、自分の好みをよく理解してくれている、という好意的な感情を醸成することができるからだ。

 リアクティブなレコメンデーションで、自分の好みをちゃんと伝えることができる、聞いてくれる、ということを顧客に実感してもらう、そしてプロアクティブなレコメンデーションで、顧客の望みを理解していることを実感してもらうこと、これがCRMの本質かも知れない。
 
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