マーケティングの直接的な目的、それはさまざまなコミュニケーションを通じて、ターゲットの態度変容、行動変容を促すことである。
態度変容をわかりやすく言い換えると、ターゲットの気持ちや知覚を変化させることであり、具体的には「自社製品を好きになってもらうこと」である。また、行動変容とはターゲットの行動を変化させることであり、具体的には「自社製品を購入してもらうこと」である。
もっとも、いきなり自社製品を好きになってもらえるほど世の中甘くないので、まずは製品名を知ってもらうこと、覚えてもらうことから態度変容のためのコミュニケーションをは始めることになる。また、自社製品を迷わず買ってくれる人はそういないので、まずは試供品を渡したりして、トライアルから始めるのが定石である。
行動変容を起こすのは、結果が目に見えるのでコントロールしやすい。あるプロモーションの結果、トライアルが増えない、あるいは実購買が増加しない、ということであれば別のプロモーション施策に切り替えるといったことが比較的容易にできる。
ところが、態度変容は、ターゲットの気持ち、知覚を扱うだけにその変化を捕捉するのは簡単でない。そもそも感情を変化させるのは時間がかかるし、その測定は、アンケート調査などを通じた間接的な方法でしかできない。
つまり、態度変容は明確な形でコントロールが困難なものであり、これを扱うことは人間心理に訴えるテクニック、すなわち「芸術」の領域なのである。
テレビのコマーシャルにしろ、新聞・雑誌広告にしろ、どのようなタレントを起用するか、どのようなコピーにするかによって、エンドユーザーが抱く当該製品に対する感情、知覚はまったく異なってくる。そもそも感情を狙った方向に変化させる手法は論理的なアプローチだけでは決して導くことができないたため、ディレクター、クリエイターの芸術的センスが要求される。
どんなにインターネットが普及し、さまざまなメディアのデジタル化が進み、またデータの分析技術が進歩したとしても、ターゲットユーザーのエモーショナルな側面にアピールし、製品に対する好意的な感情を生みだすようなパワーを持つコミュニケーションは、やはり生身の人間の芸術的センスに依存するしかない。
コミュニケーションの本質は「ART」である。インターネットもしょせんメディアにしか過ぎない。
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