「2割の顧客が8割の売上、あるいは利益をもたらす」
以前もふれたが、Customer Relationship Management、あるいはリレーションシップ・マーケティングの有効性、必要性を裏付けるセンテンスである。
使えるお金は限られている。だから、その限られたお金を企業に大半の売上・利益をもたらしてくれる、つまり貢献度の高い顧客に集中的に投下すべきである、という論理展開である。
しかし、一方でこんなことも良く言われる。
「毎年顧客の5−10%が離脱していく」
離脱率(当該企業の製品購入を止めてしまう率)は、企業によって大きく差はあるが、どんなにCRMに力を入れても、一定の離脱率は必ず発生する。死亡、引越し、ライフスタイルの変化など、要は顧客ニーズが消失したり、物理的にその企業の製品・サービスが利用できなくなることに対して、企業側は何も対応できないからだ。
「優良顧客にフォーカスしよう」というスローガンは結構だが、優良顧客にフォーカスしすぎた結果、顧客とともに年を取り、先細りとなりいつしか消滅していく企業が実は多いのである。(最後にやたらと新規事業に手を出したりして悪あがきをするため、表面的にそう見えないだけ!)
企業が「Going Concernの」言葉通り、継続的な事業運営を目指すのであれば、顧客構成にも明確なポートフォリオの考え方を持たなければならない。
この場合のポートフォリオのポイントを言えば、現在の利益をもたらしてくれる顧客を大切にしつつ、将来の利益をもたらしてくれそうな顧客を育てる、また、いいとこ取りばかりして儲けさせてくれない顧客を「切る」(不遜ながら)という境界線を明確にすることである。
One to One Marketingのドン・ペパーズ氏の表現を借りれば、MVC(Most Valuable Customer)を識別すると同時に、MGC(Most Growable Customer)を識別し、育てるための施策を持たねばならないのだ。
「切らねばならない顧客」に対応する表現をドン・ペパーズ氏は利用していないし、どうやって縁切り(本当に不遜な言い方だが)するかもこれまでふれていないが、日本語としては、「損切り客」とでも呼ぼう。そして「縁切り」施策は、以前このメルマガのテーマとして取り上げた「ディスロイヤルティ戦略」がそれにあたる。
それにしても、実はどの顧客が優良顧客であり、どの顧客が成長株なのか、を見極めるのは簡単ではないのが現実だが。顧客データの一元化から始めなければならないから。
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