コンピュータの驚異的な機能・性能の向上と低価格化が、日々の細かい取引に伴って発生する膨大なデータの管理・分析をようやく現実的なものとなった。
しかし、膨大なデータに翻弄され、とりあえず集計結果を出力するだけで精一杯だ、とすると問題である。「何のためにデータを管理・分析するのか」ということを念頭に置いた上でなければ、時間・労力のムダとなる。
そこで、今回は、分析の基本的な姿勢に立ち返ってみる。
まず、分析されるべき「データ」とは何だろうか?
データとは行為そのもの、またはその行為の結果を特定の測定単位で示したものである。例えば、営業活動という行為は、月当たり顧客訪問件数や、1顧客当たり商談回数といった単位で測定できるし、行為の結果は、「売上金額」という金銭で表すことができる。
そしてこのデータを分析することによって、行為をコントロールする、ということが、実は経営管理の根本にある。上記の例で言えば、実績のあがらない営業マンとトップセールスマンとで顧客訪問件数を比較したり、商談回数を比較することによって、どこに成約率が低い原因があるのか、を把握すれば、成績のふるわない営業マンの行為を改善指導できる、というわけだ。
このことをもっと卑近な例で示す。車の速度計を思い浮かべてもらいたい。速度計は、「車の運転」という行為を、「車が進行する速さ」という尺度で示している。速度計があることによってのみドライバーは、速度を自由にコントロールできる。
さて、ポイントはこれからだ。
あてのないドライブならともかく、通常は車を運転する目的は、どこか行きたい場所への移動である。速度をコントロールすることが目的ではない。
目的が、ある地点への到達だとすると、速度はその目的達成にどれだけの影響を持っていたのかを知ることが重要である。つまりインパクトの強さが問題なのである。
経営管理においても、営業、マーケティング、カスタマーサポート等、さまざまな企業としての行為を測定するだけで終わってはいけない。それらが、売上増大、利益獲得、顧客満足度向上といった経営目的にどれだけのインパクトを与えることができたのか、まで踏み込んだ分析をやらなければ、実際の対応策(行為の改善策)は打てないからだ。
時速300キロの車でぶっ飛ばして、あっというまに到着したとしても、それが目指す場所とは正反対だったとしたらインパクトは‘0’である。
「インパクト・アナリシス」
これは一般的に使われている言葉ではないが、上記に述べてきた分析の本質を忘れないために使ってもらいたいと思う言葉である。究極の目的に対して個々の行為がどれだけのインパクトを持ちえたか、を分析すること、これが「インパクト・アナリシス」である。
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