JCBが運営していた仮想商店街(ヴァーチャルモール)‘Jモール’の閉鎖が決まった。利用者数・売上高が当初目標を大幅に下回ったためだが、その原因として、「SET」というセキュリティシステムを導入したことが大きいようだ。
「SET」とは、決済等において、クレジットカード番号など、悪用されては困る情報を暗号化して送信する仕組みだが、ユーザー側に「ウオレット」というソフトをインストールしなけばならないのが面倒で普及が進んでいない仕組みだ。
笑ってしまうのが、クレジットカード会社の社員でさえSETの設定に手間取っていた、ということだ。セキュリティ尊重は大切だとしても、利用自体を回避されるようなシステムをわかっていながらなぜあえて採用したのだろうか?
あるいは、問題が明確になった時点で、なぜすぐにユーザー側の負担のない、「SSL」というセキュリティに移行しなかったのか?
彼らには一消費者としての「普通の感覚」が欠如していたとしか思えない。
「普通の感覚」欠如のいい例がもうひとつある。
「フリーPC」だ。
これは、パソコンとインターネット接続サービスをセットで契約すればパソコンはただでもらえるというやつだ。ところが、契約内容をよく見ると、「PC保守サービス料」とか称して、毎月一定額が徴収されることになっている。
なんのことはない、「フリーPC」の実態は多少割のいい「分割払い」に過ぎなかった。
消費者はバカではない。こんなことは、普通に考えればすぐにわかることだ。「フリーPC」を展開している企業は、一様にユーザー獲得に苦労し、どんどん撤退し始めている。
どちらの例も、「普通の感覚」で考えれば、まずうまくいかないのは明白だったはずだが・・・。
「普通の感覚」というのは、わかりやすく言えば、「あっ、それっていけてる」「なんかピンとこないね」と即座に感じることである。これは、マス(大衆)を対象とする商品、ファッションではなく実利的な商品(機能・性能が重視される)の場合、とても大切にしなければならないことだ。(なお、ターゲットが極めて限定されていたり、機能より感性が重視されるような商品の場合、「普通の感覚」はむしろ障害になる可能性があることを忘れてはいけない)
どうやったら売れるのか、を考えるのはとても難しい。が、普通の感覚で駄目だと思ったら、売れない予測は簡単である。
なお、上記に関連する内容が書かれたものに、
「wunderman dentsu CRM NEWSLETTER」
http://www.impiric-d.com/jp/letter/index.html
のバックナンバーがある。参照されたい。
No.1 (Aug. 1999)
wunderman Dentsu Special
「パソコンやインターネット接続サービスの無料提供は事業として成立可能か?」
No.3 (Oct. 1999)
wunderman Dentsu Special
「リスク低減行動とセキュリティ」
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