最近、日経新聞の記者が、「CRMブームもそろそろ終わり・・・」といったコメントを付けはじめた。私としては、4,5年前に流行ったBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」と同じように、その本質が理解される前に風化してしまうのではないか、という不安を持たざるを得ない。
そしてまた、経営コンサルタントが、広告会社が、ITベンダーが、そしてCRMを実践する様々な業種の事業会社が、それぞれ自分勝手な解釈でCRMを取り入れ、その結果、成果を得られずに放り投げてしまう、という、ありがちなパターンが起こるかも知れない。
現実問題として私が危惧するのは、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)という言葉が、あらゆる人々の口から安易に語られてしまっているために、「そもそもCRMって何なの?」という疑問が、多くの人々の頭の中で渦を巻いている状態に陥っていることだ。
CRMは、これからの経営において最も重要な概念であり、「マーケティング」と言う言葉と置き換えてもいいとさえ私は思う。だからこそ、その本質を理解した上で取り組んでいって欲しい。そのためには、まずCRMに取り組む事業会社を支援するコンサル会社や広告会社、ITベンダーの人たちが本質を踏まえた上で業務を進めることを求めたいと思う。
さて、本質とは常にシンプルなものだが、CRMの本質とは何だろうか。
答えは「経営を顧客主導型で行うこと」である。
顧客主導とは、言い換えると、顧客の情報(ニーズ、意見、不平不満、購買行動・・・等々)に基づいて企業活動を行う、ということだ。「それって当たり前じゃないの」と思う人もいるかもしれないが、単なる理念ではなく、それを実践できているかどうか、が重要である。
・顧客ニーズをきちんと反映させた商品企画・開発ができているか
・顧客の情報に基づいた、適切な広告・プロモーション、営業活動ができているか
・顧客の情報に基づいた、適切なカスタマーサービスを提供できているか
上記のような問いに、「もちろん」と言える企業は既にCRMの本質を把握し、実現できている企業である。
CRMという言葉の下で頻繁に登場する、「統合データベース」「CTI」「SFA」「データウェアハウス」「データマイニング」「ビジネス・インテリジェンス」「ナレッジマネジメント」といった技術や仕組みは、全てCRMの本質を実現するための手段に過ぎないということを忘れてはいけない。
また、当然ながら、ゴーイングコンサーンとして永続的な活動を維持するに足る利益を得ることも忘れてはいけない。(つまり、CRMは、顧客の言われるがままに経営をやる、ということではない)
CRMは、別の言い方をするならば、顧客、企業ともに満足を得る、WIN-WINの関係を構築するための経営そのものとも言えるだろう。
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