私は商学部出身である。(最近、自分の昔話が多くて恐縮だが、前ふりなのでご了承いただきたい(^_^)
しかし、どういうわけだか今は覚えていないが、ゼミは「情報科学」を専攻した。指導教授は理工学部の先生である。(ちなみに「五百井清衛門」(いよいせいえもん)という大層立派なお名前をお持ちである)
私が現在、マーケティング・経営と情報技術の両方に強い関心を持ち、また両者が融合する場であるインターネットにどっぷりと浸っている理由は、実は学生時代にさかのぼるのかも知れないと思う。
さて、五百井先生の情報科学では何を学ぶのかな・・・と思ってゼミにのぞんだら、メインテーマは「システム」だった。
システムというと、すぐに「情報システム」という言葉が浮かんでくる方が多いと思う。コンピュータの世界の話だと考えてしまいがちである。しかし、システムとは、簡単に言えば、「相互に関係性のある物事の集合体」のことを言う。そしてシステムの研究とはその「関係性」を研究することなのである。関係性とは、一方が原因であり、もう一方が結果である場合(因果関係)と、一方が変化すると、もう一方も同時に変化する場合(どちらかが原因というわけではない、統計学では相関関係と呼ぶ関係)がある。
社会システム、政治システム、自然環境システム、家庭システム、消費行動システム・・・関係性のある物事はすべてシステムとして捉えることができる。そして、システムを構成する要素間の関係性を知ることによって、予測や適切な施策立案ができるようになる。
こういったシステムの考え方自体、思考技術として役に立つと思うが、実務に役立つ、確立された手法に「ワークデザイン」(理想システム設計)というものがある。これも簡単に説明すると、あるシステムをまず外から眺める。そこに材料をいれる(INPUT)と、システム内でなんらかの加工が施されて最終生成物として出力(OUTPUT)されるものとする。そして、システム設計とは、このシステムの中味を決めていくことである、とする方法である。つまり、INPUTをOUTPUTに変える仕組みを考えるということだ。
この方法の有用性は、ゼロベースで最適なシステムを考えることができる、という点である。INPUTをOUTPUTに変化させるシステムを現状にこだわらず設計する、つまりはBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)に使える手法なのである。だから「理想システム設計」と呼ぶ。
また、まず最初にINPUTとOUTPUTを決めることで、思考の道筋がクリアになり提案書作成や議論がやりやすくなるという実利もある。
CRMシステムで考えてみよう。
CRMシステムのINPUTは、「ノンユーザー」である。 OUTPUTは、「ロイヤル顧客」となる。
すなわち、CRMシステムは、ノンユーザーをロイヤル顧客に変化させる一連の仕組みである。
これだとまだ大枠すぎてシステム設計がやりにくいのでサブシステム(下位システム)に分けてみる。
CRMシステムのサブシステムは、「見込客獲得システム」「顧客化システム」「ロイヤル顧客化システム」の3つである。
「見込客獲得システム」のINPUTは、「ノンユーザー」であり、OUTPUTは「見込客」である。
「顧客化システム」のINPUTは、見込客獲得システムでOUTPUTされた「見込客」であり、OUTPUTは「購入客」となる。
「ロイヤル顧客化システム」のINPUTは、顧客化システムでOUTPUTされた「購入客」であり、OUTPUTは「ロイヤル顧客」である。
図的に展開すると下記のように表せる。
ノンユーザー
↓
「見込客獲得システム」
↓
見込客
↓
「顧客化システム」
↓
購入客
↓
「ロイヤル顧客化システム」
↓
ロイヤル顧客
いかがだろうか?
システムとして考えると、提案書作成などが、とても楽になるはずだ。
|