「NEEDS & WANTS」
商品開発・マーケティングにおいて、まず考えるのはこの言葉だ。ターゲット顧客のニーズやウオンツは何なのか、要は、「欲しいモノは何か」ということをアンケート調査やグループインタビュー等のマーケティングリサーチを通じて洞察しようとする。
ところが、どんなに企業が知ろうと努力しても、「消費者ニーズがどうしても見えてこない」という認識がますます強くなっているようだ。
だが、これは当然のことである。既に言われて久しいことだが、「欠乏しているから欲しい」「生活にどうしても不可欠だから買わなければならない」という時代は既に終わっている。所有欲はかなりの部分充足されてしまっているといえる。
こんな満たされた人々が恐れるものがある。
それは、「現在得ているモノを失うこと」だ。現在の職場、地位、年収、家族、友人、車、家等々。代替が困難であるものほど、「失うこと」の心配(CONCERN)が高まる。現在「癒し」系の商品・サービスが受けているのは、実はこういった失うことの不安感を少しでも解消したいという心理の反映である。「安心」「安定」を求めている人が増加しているということだ。
もう一つ、消費者心理の変化として認識しなければならないのは、「必要・不必要」「高機能・低機能」ではなく、「好き・嫌い」「関心がある・関心がない」(INTEREST)という軸で、商品・選定が行われる比率が大きくなったということがある。
これは、商品・サービスのデザインの優劣、あるいは、ブランドイメージの優劣が、成功の鍵を決めるようになってきた、という傾向をもたらしている。デザインを重視したソニーのPC‘VAIO’が売れたのは、開発担当者がこの消費者心理の変化を見事に洞察したからだろう。
「INTEREST & CONCERN」(関心と心配)の発想に基づく顧客心理の洞察(カスタマーインサイト)が、これからの新商品・サービス成功の必要・十分条件である。
*「INTEREST & CONCERN」は、慶応大学助教授妹尾堅一郎氏が、先日の講義で提示されたコンセプトです。
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