Weekly Matsuoty 2001/05/22
スーパーポテンシャルマン
 
 トップセールスマンはほぼ例外なく、既存顧客を大切にすることで、反復購入を通じたベースの売上を得る。さらに既存顧客からの口コミによって新規顧客を獲得し、抜けてしまった既存顧客の売上を埋め、さらに既存顧客ベースを拡大していく。実際、大手生命保険で表彰を受けるようなあるトップセールスマンは一切新規営業をやっていない、と聞いたことがある。

 考えてみれば、新規営業は極めて効率が悪い。まさに足を棒にして歩き回って時間をかけて、ようやく1件の新規が取れる、というのが現実である。

 逆に既存顧客を大切するのは理論的には簡単だ。一度心を開いてくれたお客さんだから、適切なタイミング、方法でにコミュニケーションをとることは、顧客にとっても「気にかけてくれている」と感じてうれしいもの。だからこそ、繰り返し購入してくれたり、友人を紹介してくれるという結果につながる。

 ただ、実際には、既存顧客を大切にできないセールスマンも多いわけで、だからこそ、CRMという概念によって、個人レベルのスキルに依存するのではなく、企業全体として、顧客との継続的な関係づくりをきちんと管理しようという意識が生まれてきたのである。

 上記の話を踏まえると、一般な定義としてのCRMは、主として既存顧客のつなぎとめを目的とする考え方・方法論である。

 しかし、私がお会いする企業の販売担当者・マーケターの方々最大の課題は、今も昔も「新規顧客の獲得」である。つまり、現場の考え方 とCRMのそれとのずれがあるのだ。実際問題として、顧客がいなければ、既存顧客との関係づくりは始められない。まず顧客を獲得しなければならないのである。

 となると見込み客をどうやってみつけ、かつ見込み客を購入客に変えるかという問題の解をまず見つける必要がある。ここにはCRM的な発想が使える。つまり、「見込み客との関係づくり」という考え方である。ただし、この考え方を実践に移すには、見込み客、すなわちポテンシャルとの関係作りに長けた人間を企業は獲得、あるいは養成しなければならないのである。

 あまりぱっとしない表現だが、こんな人物を「スーパーポテンシャルマン」と呼ぼう。トップセールスマンとスーパーポテンシャルマンがうまく連係できる企業、それがこれからの、企業ではなく顧客が市場を形成する時代、言い換えると、売るという発想は通用せず、買ってもらうという発想に切り替えなければならない時代、つまりは「顧客が主役の時代」に生き残っていける企業だ。
 
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