Weekly Matsuoty 2001/06/26
MECE
 
 私は、20代の一時期、フィールド調査員を2年ほどやっていた。関東一円の、ダイエーのような大型量販店から、食品スーパー、コンビニ、薬局、化粧品店、酒屋、タバコ屋などを回り、一般消費財の在庫調査を行った。

 調査対象品目は多岐に渡っており、おそらく数千品目に上っていただろう。当時まだ子供もいないのに、紙おむつのブランド別の特徴に詳しかったり、個人的興味はなかったが、いまでも生理用品や化粧品のブランド名のほとんどを諳んじることができるのは職業病である。

 さて、調査をやる上で欠かせないことは、個別のブランド名を覚えることではない。むしろ、製品分類の構造を理解することである。当時は、ある分類構造に沿って品目が並んでいる数百ページの調査票をめくって、個別ブランドを探さなければならなかったからである。

 たとえば飲料水のコーナーの調査を開始したとする。まず「爽健美茶」があった。調査票は、炭酸飲料、非炭酸飲料という大分類になっているので、まず非炭酸飲料のセクションをめくる。次に、果汁飲料、非果汁飲料、茶系飲料という中分類があるので、茶系飲料のセクションをめくる、といった感じである。

 調査レポートでは、個別ブランドの売上・在庫量に加えて、製品カテゴリー全体の売上・在庫量も算出するため、すべての個別ブランドはどこかのカテゴリーに必ず分類されている。分類されないブランドは存在しない。当然、「炭酸入り紅茶飲料」といったどのカテゴリーに入るのか、わかりにくいものもあるが、便宜上どこかのカテゴリーに強引に分類される。

 ところで、最近よく目にするようになってきた言葉に「MECE」がある。Mutually Exlcusive, Colle-ctively Exhaustiveの頭文字を取ったもので、ミーシーと読む。「互いに重ならず、すべてを網羅する」という考え方であり、様々な事象や課題を整理するために経営コンサルタントが使う枠組みだ。

 「MECE」というのはなんだか大仰な言葉だし、最初に説明を受けただけでは、なかなかとっつきい、わかりにくい概念だと私は感じていたのだが、結局のところ、「分類すること」に過ぎないんだと、最近ようやく気づいた。つまり、以前さんざん体で覚させられた手法だったのである。

 「MECE」とは「分類すること」だと考えればそんなに難しいことではない。よく、経営環境分析において、3C(Consumer, Competitor, Company)という枠組みを利用するが、これは、3Cという分類基準に沿って、様々な経営課題や実態をもれなく振り分けるということなのだ。

 複雑に絡み合っている問題も、中分類、大分類と振り分けることができれば、全体が見えてくる。問題同士の関係も理解しやすいものとなる。

つまり、構造化される。それが、「MECE」の本質である。
 
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