Weekly Matsuoty 2001/08/29
CRMの次に来るもの
 
 CRM:Customer Relationship Managementの思想は今、満開の季節を迎えたんだと思う。
もちろん、CRMは一時期の流行で終わるものでなく、「マーケティング」という言葉に匹敵する重要な概念として今後も生き残っていく言葉である。ただ、業界でもてはやされる時期としては、そのピークに到達したということだ。

 ということは、今後はCRMは当たり前の概念として受け入れられて行きはしても、企業が最優先で取り組むべき課題ではなくなっていくということを意味する。

 では、CRMの次に来るものは何か。その兆候は既に見えている。その概念にあえて命名するならば、ERM、すなわち、「Employee Relatinship Management」である。この概念が目指すのもは直接的には従業員満足であり、従業員との良好な関係な維持が最終目的だ。

 これは、マーケティング、あるいは経営における大きなトレンドとして位置付けることのできる兆候である。

 ちょっと前までの企業にとって幸福な時期、つまり、需要が供給を上回っている時代においては、「事業者満足」でよかった。なぜなら物不足だから、どんなものを作ってもそれなりに売れたからだ。

 その後、競争が激化し、供給が需要を上回る時代には、「顧客満足」が重要となった。顧客が満足してくれる製品を提供しない限り、自社製品が購入されることはないからである。

 しかし、今、製品に加えてサービスが製品選択における重要な要因となった。そんなサービス化経済において重要な役割を果たすのは従業員である。その従業員が満足していない限り、顧客を満足させられるサービスが提供できるわけがない。

 だから、これからは「従業員満足」が企業の最大の課題となる。このことは、既にバージングループのリチャード・ブランソン会長や、スターバックスのハワード・シュルツ会長が以前から言っていたことだ。ただ、まだ主流を占める意見になっていなかった。

 ここで、「従業員満足」を課題として取り上げるということは、企業組織のあり方、業績評価制度のあり方、あるいは個人キャリアのあり方について明確な方針を打ち出していくことが企業に求められることを意味する。ここに、次のビジネスチャンスがあるだろう。

 そして、この次世代のビジネスチャンスを掴みたいと思うなら、まず哲学、歴史、心理学を学ぶ必要があると思う。これは、以前指摘した、21世紀は「ヒト」の時代であるということと根っこは同じである。

 これからは、「ひと」個人の問題を解決しようとしなければ、企業は成り立たない時代に入る。
 
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