Weekly Matsuoty 2001/09/05
矛盾を突く!
 
 クッキングオイル、つまり家庭で天ぷらを揚げる時に使う油で、現在バカ売れしているのが、花王の「エコナ」である。

 なぜ売れているかというと、エコナを使うと体脂肪を減らす効果があるからだ。油と言えば太る元と考えるのが常識であるが、痩せる効果を持つ油もあったということだ。

 これまでは、「油をたっぷり使って、かつ痩せる」というのは矛盾した考え方だったが、エコナを使えば矛盾ではなくなる。

 この製品の開発には開発者の長年にわたる血のにじむような努力があったというが、周囲の懐疑の目に耐えながら、ついに矛盾の壁を打ち破った。

 このような矛盾を乗り越えるのは難しい仕事であるだけに、競合他社も簡単には追いつけない。実際、大手クッキングオイルメーカーは、エコナのおかげで大打撃を受け、まさに屋台骨がゆらぐ事態になっているという。

 さて、私も今、ある企業のASP事業のためのWEBアプリケーション開発をやらせていただいているが、これも矛盾をなんとかして乗り越えようとしているビジネスである。

ASPとは、一言でいえば「標準機能の共有サービス」である。あらかじめ作りこまれた一定の機能をそのまま受け入れ、サーバやアプリケーション、DBを共有することで、一社あたりのコスト負担を軽減しようとするのがASPの目的であり、セールスポイントである。

 ところが、今回お手伝いしているASP事業は、「個別企業のビジネス要件に応じて、最大限のカスタマイズを行うこと」を最大のセールスポイントとしている。

 このような、「標準化」と「カスタマイズ(個別化)」を両立しようとするのも、明らかに矛盾した考え方である。誰も普通は考えようとしない。しかし、そこに商機がある。この事業の責任者はそう考えている。

 このASP事業はこの9月から開始されたばかりであり、その成否はこれからの話ではある。しかし、私もこの事業の関係者として、大いなる矛盾を乗り越えた先に広がる可能性に賭けている。
 
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