Weekly Matsuoty 2001/12/11
雑誌リニューアル
 
 女性向けファッション誌として、一定の地位を確立している「マリ・クレール」も、1982年の創刊以降しばらくは泣かず飛ばずで、「25ans」(ヴァンサンカン)と並んで、失敗したファッション誌の代表とされていたそうだ。

 その頃、海外文学の紹介などを中心としていた、知るひとぞ知る通の雑誌「海」が購読者減で廃刊され、その編集部もお取り潰しとなった。そして、行き場をうしなった編集者の数人が配属されたのが「マリ・クレール」だった。

 さて、海外文学ばかりやってきた編集者が、いきなりファッション雑誌らしい記事を作れるはずもない。彼らは、「海」時代にやっていたことをそのまま取り入れることにした。こうして、「マリ・クレール」で、吉本隆明や浅田彰といった、「えっ」と思わせるような執筆陣を招いた特集を組み、それが奏功したのだと言う。

 当時、しばしば「マリ・クレール絶好調の秘密は何ですか?」と関係者は聞かれたらしいが、実はこんな裏話があるとはなかなか言えなかったらしい。

 これは、外見(パッケージ)は同じなのに内容をガラリと変えて成功した例である。

 ……

 数年前に「婦人公論」が大リニューアルを行ったのはちょっとした話題になったので覚えている方も多いと思う。

 固定客をしっかりつかんでいた「婦人公論」も購読者の高齢化により部数減少に苦しんでおり、若い非読者層へのアピールが必要だった。

 そこで、内容はそのままだが、月1回の発行を月2回に、判型を通常の雑誌サイズまで大きくし、また篠山紀信を表紙写真に採用した。そして、リニューアル第一号には、当時の婦人公論読者に最も嫌われていた「松田聖子」(しかし若年層には人気があった)をあえてぶつけたのである。

 その結果、これまで手にも取ってくれなかった若年層を読者として取り込むことに成功した。

 当時、婦人公論編集部が恐れたのは、既存読者層の反応だったと言う。全国各地には、有志による「婦人公論愛読者の会」があるほどの雑誌である。実際、「さよなら」とだけ書かれた葉書が送られてきたこともあったそうだ。しかし、一度は離れた既存読者も、内容はこれまでどおりであることを理解し、また戻ってきてくれたという。

 婦人公論の場合、内容は変えずに、外見だけを変えて成功したケースだ。マリ・クレールとはちょうど正反対の事例である。

 どんなロングセラー商品も、時代の変化、ユーザーの変化に合わせて少しずつ内容・成分を変更してきているのをご存知だろうか。またしばしば外見(パッケージ)のみの変更が意味を持つことが上記の事例からもおわかりだろう。
 
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