過去10年ほど、様々な企業のマーケティング・コミュニケーションのお手伝いをやってきて思うことがある。
それは、マーケティングコミュニケーション施策は、一環したコンセプト・方針の基で展開されるべきであるという考え方が、広告代理店、および広告主(クライアント)側にもようやくわずかながらも理解されてきたなあ、ということだ。
ここで、「マーケティング」ではなく、「マーケティング・コミュニケーション」の次元で話していることをあらかじめ断っておきたい。広義の「マーケティング」には製品開発を含むが、「マーケティング・コミュニケーション」は、すでに目の前にある製品・サービスをターゲットユーザーに対して、いかに訴求し、売りにつなげるか、という部分のことである。簡単にいえば、広告や販売促進(プロモーション)施策のことだ。
さて、つい最近までマーケティングコミュニケーション施策はかなりバラバラに立案・実施されてきたと言っていいだろう。(今でもそんな企業は多いだろう)
広報を担当するセクション(担当)と広告を担当するセクション、プロモーションを担当するそれが異なったり、仲が悪かったりで、それぞれが独自のコンセプト・方針を通していた。(くどいようだが、今でもそんな企業は多いだろう)
でもそんなバラバラなことをやっていたらユーザーとの良好な関係を築くこと、つまりCRMが実践できないのは明白である。
コミュニケ−ション統合の重要性は、ずいぶん前から「IMC(Integrated Marketing Communication)」という考え方で提唱されてきたことだが、ようやく、それがお題目ではなく実践段階に入った。
では、IMCにおける施策立案の基本線をどう考えたらいいのか?
私は、シンプルに、「ブランディング」と「ロイヤライジング」の2つの軸で整理することを提案したい。実際のマーケティング施策の実行計画は極めて詳細なものにならざるを得ないが、コンセプトとしてはこの2つの軸で整理するのが理解しやすいと思う。
「ブランディング」とは、簡単に言えば、社名や製品・サービス名から連想されるイメージ(品質がいいとか、安いとか)を、競合他社とは明確なポジションに位置付けることを意図するものである。つまりは、競合他社とはどこが違うのか、を明確に打ち出すコミュニケーションを工夫することだ。なお、ターゲットユーザー側でその違いを明確に理解している必要はない。ターゲットユーザーのイメージに働きかけるものだから、理屈を超えた部分も存在する。「感性」が重視される所以である。
「ロイヤライジング」とは、いわゆる「優良顧客」創造のプロセスを設計することである。すなわち「非顧客」から「見込客」、「購入客」「優良顧客」までの段階を認識しつつ、それぞれの段階にふさわしいコミュニケーションのあり方を考える。「ブランディング」との違いは、ターゲットユーザーのイメージの形成ではなく、具体的な行動・反応を促進することを目的とする点である。
「ブランディング」施策を通じて、ターゲットユーザーの知覚(イメージ)に訴え、「ロイヤライジング」施策を通じて、ターゲットユーザーの行動を引き出す。そして、当然ながら、「ブランディング」と「ロイヤライジング」は一環したコンセプトと方針で展開される。
これからの「マーケティング・コミュニケーション」の基本形はこれだ。
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